AYREON
country: Netherland〜Multi National
style/genre: Symphonic Rock, Prog Rock, Prog Metal, etc.
website: http://www.ayreon.com/
related bands/artists: Bodine, Vengeance, Star One, Ambeon, Ed Warby, Eric Norlander, Clive Nolan, etc. 他多数。
similar bands/artists: Pink Floyd, Rocket Scientists, Arena, Pendragon, etc.
artist info: Arjen Anthony Lucassenによるスペクタクルで壮大なシンフォ・ロックプロジェクト。ゲスト参加も非常に豪華絢爛。



Ayreon - Actual Fantasy
Transmission Records/InsideOut
(1996)

90年代の中期にAyreonが始動して以来、現在に至るまでコンスタントにアルバムをリリースしています。Actual Fantasyは、Ayreonプロジェクト2枚目のフルレングスとなりますが、Ayreonのディスコグラフィーの中では割と地味めの作品という位置付けをされているかもしれません。前作のThe Final Experimentが、ロックオペラ作品として成功をおさめているだけに、次のアルバムの制作ではどうでるのか?というのが当時の話題であったと思われます。この作品では、かなり色々と実験的な音作りが随所に散りばめられている感じがします。演奏面においては、ネオプログレ風味のサウンドをよりハードエッジにしたような感じもあります。全体的には、ソング・オリエンテッドな方向性で固めております。ファンタジーを意識しているものの、特にあるコンセプトを元に全体が貫かれているという訳ではないようです。今までのAyreonの作品と比べると、ゲストミュージシャンの数はそれほど多くはないです。ゲスト・ボーカリストとして3人参加していますが、その中でも、やはりKayakEdward Reekersの歌声が非常に暖かみがあって、素晴らしいです。殆どのインストゥルメンタルは、Arjen Anthony Lucassenによって演奏されています。個人的に印象的だったのは、キーボーディストのCleem DetermayerRene Merkelbachによるシンセソロからハモンドオルガンのプレーが非常に心地よくて、テイスティーなところが、このアルバムを堪能するポイントの一つになりました。特にActual Fantasyアルバムにおいては、2曲目のAbbey of Synnと4曲目のComputer Eyesが気に入りました。確かに全体をずっと通して聴くと、ムードやテンポが似ているものもあるので、聴き手によっては非常に淡白な印象に聞こえると思います。しかし、このアルバムでの取り組みが、今後のAyreonに発展していくことを考えるならば、無視できない重要な位置付けのアルバムなのかもしれません。(購入盤Review)


Ayreon - Into The Electric Castle
Transmission Records
(1998)

プログレ界では一挙に有名人となったアルイエン・ルカッセン氏が主導のAyreonは非常にユニークで個性のあるプログレッシブ・ロックを追求している。単なるプログレッシブ・メタルやハードロックにとどまらないで、シンフォニックなプログレとハード&メタルの要素をヨーロピアンなテイストと血統により、ドラマティックにまとめあげている手腕は、すごいものがある。さらにWithin TemptationやsThe Gatheringのようなアトモスフェリック系のゴシック派やメロディック・ドゥーム系メタルバンドのシンガー達もゲストに参加しており、いろんな良質な要素を巧みにブレンドしていくあたりは、このアルイエンの卓越したアレンジ能力と作曲能力に由来しているのだろう。今までのプログレッシブ系を意識したHR/HM系ミュージシャン達の中でも彼の才能は、ひときわ違うレベルにあるのかもしれない。そういう点で考えると、アルイエン・ルカッセンという男は、メタルからプログレにいたるまでのアイディアを自分のものにしている恐るべき才能の持ち主であり、壮大なスペクタクル作品の数々を手がけてきている点に驚きを隠せない。(購入盤Review)

PILGRIM WORLD推薦盤


Ayreon - The Human Equation
InsideOut
(2004)

前作The Universal Migrator pt.1, pt.2で一旦は完結したかに見えた、このAyreonプロジェクト。しかし、Arjen Anthony Lucassenは、今までとは異なるアプローチで作品The Human Equationを完成させた。今までは、ファンタジーやサイエンス・フィクション的なテーマを取り上げていたが、この作品は交通事故で昏睡状態になった主人公MEを中心に焦点に合わせている。ストーリー・ラインは、謎のカーアクシデントにあった主人公MEが病院の一室で横たわっているところから始まる。主人公の容態を心配しながら、病院のベッドルームでMeの横に佇む奥さんと主人公の親友BEST FRIENDが様々な会話を交わしていく。また、様々な心象風景や実際の出来事などが、仮死状態のMeに影響を及ぼしつつ、主人公の体内に棲むいくつかの感情が、ひとつひとつのキャラクターとして登場し、問答が展開されるといった具合の内容がおおまかな内容であります。結論というか、最後はちゃんとオチがついているが、これは最後まで全編を聴いて「オチ」を発見してくださいね。

さて音楽性は、これまでのAyreonの集大成的な作品となっていると思います。Into The Electric Castleに見られるようなNeo-Progサウンド特有のマジェスティック且つシンフォニックなロックテイストを感じさせる一方で、スペーシーなサウンドや実験的な要素を取り込みながら起伏のある音楽を作り上げています。殆どの楽器は、いつものAyreonプロジェクトと同様に、エレクトリックギターを中心にArjenによってプレーされておりますが、参加しているインスト陣も大変充実しており、キーボーディストとして参加している元Sun Caged/現After ForeverJoost van den BroekIQやプログレ・レーベルGEPの領袖的存在の顔も持つMartin Orford、あのRick Wakemanの息子であるOliver Wakemanや、Uriah Heepでお馴染みのハモンド・オルガン奏者Ken Hensley達が、それぞれのスポットで非常に魅力的なキーボード・ソロで貢献しています。そしてトラッド・クラシカル・フォークのサウンドを司る、クラシック畑出身でプログレやロックに深い理解を示している若手の弦楽器奏者達やウィンド・インストゥルメンタリストの存在も重要な役割を担っております。

ハード&ヘヴィ路線のStar Oneプロジェクトを終えたArjen Lucassenは、今回のThe Human Equationを作る際にメローでソフトなサイドを意識した作風にしたとDVDでコメントをしています。ですが、それと同時に楽曲によってはProg Rock的なものは、よりプログレ色が濃いものに、・・・HR/HM的アプローチの楽曲はよりヘヴィーに、・・・・トラッドスタイルの楽曲ものは、よりフォーキーで伝統的な内容に・・・・といった具合にそれぞれの楽曲の内容にあわせて色合いをハッキリとさせたものに仕上がっているというのに、私自身もおおいに同感いたしました。個人的には、Into The Electric Castleに匹敵する、長編ドラマ大作に仕上がっていると思いましたし、全編とても楽しみました。

このアルバムの大きな特徴でもあり、魅惑の中心はなんといっても、The Human Equationに参加している各方面から参加しているシンガー達の力量でありましょう。今回の作品では、ドラマーのEd Warbyを除いて、以前にAyreonのプロジェクトに参加したことのないミュージシャン達を結集させることになりました。まず主人公を担当しているのは、Dream TheaterJames LaBrieであります。彼の強みでもあるソフトでウォームな声質とレンジの広い声域が、素晴らしい。他にも多彩なシンガーのラインアップとなっており、個人的に非常に素晴らしい歌い手として感動したのは、Dead Soul TribeDevon Gravesでありました。場面によって声色を使い分け、Psychotic Waltz時代から現在のバンド活動で培った、その声量・表現力において他の追随を許さぬ凄みを感じました。男性陣として参加したシンガーは、それぞれに特徴があり、どれも甲乙つけがたいです。

OpethMikael Akerfeldtは、主に暖かみのある中低音域を披露しつつ、瞬時に極悪非道なデス〜グラント声までを使い分けるなど非凡な才能を見せております。The Quilというハードロックバンドで活躍をしているMagnus Ekwallが、これまた素晴らしいボーカリストで熱い歌唱力の持ち主という印象でありました。Eric Clayton (Saviour Machine) の低音オペラティックボーカルも、いたるところで登場しますし、鬼才Devin Townsendも個性的な味わいを出していました。非常に意外だったのは、Shadow Galleryから参加したMike Bakerで、主人公の人生に暗い影を落とす原因である父親像を、Alice Cooper的なユニークな手法で表現していて驚かされました。どうやらArjenは、今回シンガーとして参加する予定はなかったらしいが、お目当てとなるシンガーの了承を得られることが残念ながらできなかったようで、Best Friendの役割を彼が担当しています。

Ayreonのプロジェクトに欠かせないのは、華やかな女性シンガー達でありましょう。今回大きく抜擢されたメキシコ出身のシンガー、Marcela Bovioのパフォーマンスが素晴らしく、可憐で透明感のある歌声が魅力的です。 Karmaで活動をしているIrene Jansenは非常にパッショネイトな歌声で女性ハードロック歌手としての力量を遺憾なく発揮しています。Mostly Autumnから参加しているHeather Findlayは、繊細で柔和な歌声が特徴の歌手ですね。蛇足ですが、どうやらDVDの映像では元ThresholdのDamian Wilsonのガールフレンドだそうで。それから、Blackmore's Nightの欧州ツアーでもバッキングボーカルを担当していたとか。女性シンガー、そして男性シンガーの特徴と役割分担をハッキリさせて作品のメリハリをつけているところが、Arjen Lucassen氏の凄いところだなーと思います。

DVDには、レコーディング風景や参加したメンバーのコメントや会話などの映像やビデオクリップが収録されています。またブックレットは歌詞やアートワークの他にも、参加したシンガーやミュージシャン達へのコメントや特徴などが載っています。DVDの収録映像として興味深かったのは、制作する立場としてのコメントやエピソードが印象的です。殆どのシンガー達は、Arjenと一緒にリラックスした和やかなムードで録音しています。また、それぞれのシンガーのNG特集が面白かったです。またボーナスとして入っていたシンガーの横顔を拝見するところもファンは必見ではないでしょうか。例えば、堅物かと思われていた、Devon Gravesが実はかなりフレンドリーな人だったり。人嫌いなのかと思っていたMikael Akkerfeldtが、ヘッドフォンを使って馬鹿なことをやったり、シンセサイザーの前で機材にまつわるジョークをユーモアに喋っていて、案外親しみやすい人だったことが判明。実はJames LaBrieがフランク・シナトラの歌真似が、驚くほどクリソツだったり。男性シンガー陣は、それぞれが、面白い特徴をもっている人達だなーという感じですね。またLoveのビデオクリップも入っていますが、これはどちらかというとThe Human Equationに参加しているメンバー全員のお披露目みたいな感じに仕上がっております。(購入盤Review)

PILGRIM WORLD推薦盤

Discography:


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