AT WAR WITH SELF
country: U.S.A.
style/genre: Hard Prog, Prog Metal, Technical Instrumental, etc.
website: http://www.glennsnelwar.com/
related bands/artists: Gordian Knot, Michael Manring, Mark Zonder (Fates Warning), Damon Trotta, etc.
similar bands/artists: Gordian Knot, Fates Warning, King Crimson, Cynic, Aghora, Zero Hour, Voivod, etc.
artist info: Gordian Knotでも活躍をしていたGlen Snewlar率いるProgressive Rockプロジェクト。



At War With Self - Torn Between Dimensions
Free Electric Sound/The Laser's Edge
(2005)

The Laser's Edge傘下のFree Electric Soundからリリースされたトリオ編成のProgressive Rockバンドの1stアルバム「Torn Between Dimensions」。スタイル的には、ヘヴィなProg RockからダークなProg Metalなどの領域を行き来するタイプという印象です。濃密なアンサンブルと知的なエッセンスがまぶされており、演奏能力と楽曲構成の見事さに惚れ込んでおります。これは凄くいいですわ!。気になるメンバーですが、Gordian Knotの1stにも参加していたGlenn Snelwar (guitars/keyboards/mandolin/e-bow)が主に音楽的な舵取り役であり、中心人物となっております。ベーシストには、同じくFree Electric Sound名義でリリースしているMcGill/Manring/Stevens繋がりでMichael Manring。驚いたのは、ドラマーとして迎えられたのは、Fates Warningでの活動で知られているMark Zonderであります。ベテランの3人が集まっているだけに、演奏力は非常に高いです。似たタイプとしてはGordian Knotが一番近いと思います。混沌とした雰囲気の中、ウネリのあるヘヴィーでテクニカルなサウンドが前面に踊り出てくる一方で、前衛的な音楽に通じるかのような静謐な空間美を作ることにも長けています。King Crimson, Cynic, Aghora, Zero Hour、そしてFates WarningDream Theater辺りのサウンドが好きな人には、楽しめる内容が詰まっていると思います。(プロモ盤Review)

PILGRIM WORLD推薦盤


At War With Self - Acts of God
Sluggo's Goon Music
(2007)

先鋭的な感覚を持つアメリカのProg系ミュージシャン: Glenn Snelwar率いるAt War With Selfによる通産2枚目となる作品です。今回はラインナップを含め、内容が前作と比べると異なる部分が多いというのが特徴です。前作と同様に、てっきりドラマーのMark ZonderとベースのMichael Manringが引き続きメンバーとしてクレジットされているのかと思いきや、全然ラインナップが新しく替わっています。Glennを除いてメンバーは、完全に一新しております。前作をリリースする前から、親交のあったDamon Trottaなる人物が、ベースギターを中心にSynths, E-Bow, Programmingなどを担当するなど、Glennが担当する楽器や得意としているものが共通しています。タイトルトラックを除き、殆どの楽曲はGlenn Snelwarと作曲クレジットを共有しています。ドラマーはSteve DeckerManfred Dikkersなる人物の2人が務めています。さらに今回最も違う点として、異彩を放っているのがボーカリストのMark Sunshineとシンセ奏者のDave Archerの2人が参加していることと、オランダ出身のミュージシャン: James Vonbuelowがギターとプログラミングでクレジットされています。参加ミュージシャンも前作と比べると人数が多く、演奏面だけでなくサウンド面に至るまで、かなり色んな要素が楽しめるプログレッシャー寄りな内容が濃いセカンドアルバムとなっています。ブックレットの後ろにも記載されているように、Voivodのメンバーである故Denis "Piggy" D'Amour氏への大変短い追悼の言葉も含まれております。前衛的なロックからメタル系音楽の要素が少し強まっているように感じました。

前作のTorn Between Dimensionsが、Glennが以前貢献していたGordian Knotの作品に通じるダークな質感を伴うProgressive Metal/Rockサウンドで楽しませてもらった訳なので、今回の作品への期待も当然すごく高かった訳であります。さて蓋を開けてみましたところ、最初は非常に取っ付き難く驚きました・・・。いえ、決して作品が楽しめないということではなくて、なんていいましょうか挑戦しがいのあるプログレッシヴな作品に仕上げているなーとニヤリとしました(微笑)。流れ的には、ある種のコンセプトというか911に関する事件からインスパイアされたかのような、現在のアメリカの状況へのアンチテーゼというか警鐘を鳴らすかのようなものが貫かれているかようであります。特に細かいコンセプトを説明している訳でもないようなので、深くは考え込まないことにしました。流石に1回聴いただけでは、内容が濃いのでよく把握できませんでした。なので、数回にわたって聴いていくうちにいくつか見えてきました。

根幹となる部分は、前作に近い濃密でコンプレックスな側面を持つへヴィ寄りProgressive Rockが痛快であります。予定調和とは全く違うアプローチのメタリック且つケオティックなProgressive Metalサウンドと演奏力で圧倒する部分は、流石であります。しかし、新たに様々なミュージシャンが参加していることから、特に中盤や後半からはポスト・モダンなサウンドやシンセ・プログラミングを導入した現代的なサウンドなどにも挑戦しています。キーボード関連の楽器は、かなり控えめな使い方をしているので、いわゆる鍵盤楽器が主体の派手なテクニカル・シンフォ的な部分は期待できません。しかし、効果音というか雰囲気をメランコリック且つ内省的なものに仕上げる効果は充分あります。シンセ寄りのサウンドでは、King CrimsonPrimal Screamみたいなアナログシンセ風な陰を強調した冷ややかな部分が登場したり、前作よりはキーボード系が使われている場面は多いと思いましたが、派手な形では使用されていませんのでご注意を。

エレクトリック系のギターやベース、シンセなどの楽器で圧倒される一方、ときおり登場するアコースティックな楽器がテンションを緩めてくれる場面もあります。面白いのはアコースティックギターだけでなく、このAt War With Selfではマンドリンを非常に上手く使っております。やはり楽器というのは求められている部分で上手く使えば、マンドリンによってダークな質感をより引き立てるのに効果的だということを教えられます。それから、ボーカルに関して言うと、いわゆるリード・ボーカリストとしての活躍というよりは、インスト楽器などでは補えない要素を補完する感じです。とはいえ、楽曲として成立している歌ものも含まれており、その辺りはある意味新鮮でした。しかし、歌ものを中心にした楽曲は、数える程度というぐらいです。ですが、お茶を濁すような扱いではないので安心してください。まさかAt War With Selfで歌ものが聴けるとは、想像だにしていなかったのでビックリです。いやー、なんか今回のActs of Godでは色んなことに挑戦していますね、Glennさん。

Glenn Snelwar自身がこれまでに培ってきたスタイルやアプローチはベースとして大事にしつつも、Torn Between Dimensionsで展開されていたテクニカルなインストや技巧中心のものは大幅に抑え気味ににしている印象です。その反面、新しいスタイルやサウンドも貪欲に取り入れております。特に後半辺りは前衛的というかモダン寄りな要素が大きく前面に出ております。ひょっとしたら、耳の肥えたプログレッシヴ・ロック系のファンにもアピール度の高いProgressive Metal的な音楽と捉えることもできるのではないでしょうか。正直言うと、Torn Between Dimensionsが好きなProg Metal系ファンには逆に取っ付き難いような印象を持ちました。Dream Theater的なスタイルをここに求めると、確実に彼等の音楽の中で見失ってしまうことでしょう。

自分の場合は、不思議なことに繰り返して聴いていくうちにドンドンと嵌ってきました。前半のハード&へヴィな部分が中心で突進してくるサウンドは、新しいタイプのProgressive Metalの夜明け(?)という感じで楽しんで聴いています。この作品は、ひょっとしたらHeaven's Cryの2枚目やVoivodの音楽辺りを好むProg Metalファンには楽しめると思いますし、Gordian Knotなどのグループが好きな人にもアピール度は高いはずです。とりあえず、まだ彼等の音楽に接していないリスナーはこちらよりも、1stアルバムのTorn Between Dimensionsで様子を見ては如何でしょう。とにかく、意欲的な作品で演奏だけでなく細部にわたってもこだわりが見えますし、音の一つ一つに知性と狂気の両面を垣間見ることができる凄い作品が登場したと思います。Prog RockやProg Metalのシーンに一石を投じる刺激的な作品がここに完成したと言えるでしょう。正直、とっつきにくい作品であるのは決して否めませんが、嵌るとこれはトータルで面白いアルバムです。(プロモ盤Review)

PILGRIM WORLD推薦盤

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