BATTEN, JENNIFER
country: United States
style/genre: Hard Rock, Guitar Instrumental, Experimental/New Tendencies, etc.
website: http://www.batten.com/
related bands/artists: Jeff Beck, Michael Sembello, Michael Jackson, etc.
similar bands/artists: Jay Foucher, Van Halen, Scott Henderson, Steve Vai, etc.
artist info: Michael JacksonのワールドツアーやJeff Beckのバンドに参加したことで良く知られている技巧派ギターリスト。



Jennifer Batten - Above Below And Beyond
Lion Music
(1992/2008)

テクニカル系の女性ギターリストとして既にステータスを確立しているJennifer Battenによるソロ・アルバム第一弾です。このアルバム自体は入手が非常に困難な時期が続きましたが、2008年の6月にLion Musicから再発されて入手がしやすくなりました。Jenniferというと、アメリカのアンダーグラウンドやギターフリーク達の間では、凄腕プレーヤーとして80年代後期から既に大きく注目されていました。ご存知のように、彼女の存在が一躍脚光を浴びたのは、Michael JacksonBadツアーにおいて目覚しい活躍をしたことが大きいと思います。「Michaelと共演をしている、あのド派手なロングヘアーの女性は誰だったのか?」と思い出す人もいらっしゃると思いますが、それが上のジャケット・アートで確認できるJennifer Battenだった訳です。

Michael Jacksonとのツアーが終了後に、このAbove Below And Beyondの制作に本格的に取り掛かり完成させております。さて、アルバムの内容は技巧的なギター演奏が活躍するインスト作品になっています。しかし、当時の観点からみても典型的なギターインストものとは違う性質を含んでいます。彼女のオリジナル楽曲は、ハードロック的な要素が強いストレートに攻勢をかけるものだけでなく、ファンク寄りなもの、ワールドミュージック的なもの、R&Bやヒップホップ、ブラック・コンテンポラリーな要素を含む・・といった具合に多岐に渡った個性的な内容となっています。またクラシックの名曲として知られているRimsky-Korsakovの「熊蜂の飛行」を始め、Michael Jacksonの「Wanna Be Startin' Something」、Aretha Franklinの「Respect」、John Coltraneの有名なジャズナンバー「Giant Steps」などのユニークなカバーも含まれています。特にファンク寄りなものやR&B的要素が強いものは、アルバムのプロデューサーであるMichael Sembeloからの示唆もあったと思いますが、Michael Jacksonやツアーで一緒に廻ったバンドメンバーからの良い刺激や影響もあったのだと思います。

ギターの演奏は、この時点で既に完成度が高いのは言うまでもありません。プレーのスタイルは縦横無尽で両手を使ったタッピングなどを含むテクニカルなところに依存するだけでなく、クリーントーンで高速アルペジオを繰り出したり、テクスチャーを大事にした繊細なものも含まれているので個人的には充分堪能できました。Eddie Van HalenSteve Vaiといった現在でも尊敬を集めているハイレベルなプレーヤー達と比べても遜色は殆ど無いと断言できます。彼女をサポートするミュージシャン達も良い仕事をしていると思いました。アレンジやエンジニアリング面の裏方で活躍しているMichael Sembeloを始め、現在はTOTOのキーボーディストとしても活躍しているGreg Philingainesも「Giant Steps」でピアノとベースを演奏ということでクレジットされています。ギターインストが主体のアルバムとなっているので、取っ付き難いと感じる人もいるかもしれません。ですが、ギターを中心とした演奏形態が大好きな人や個性的でオリジナルテイストが含まれているインスト・ナンバーを楽しむリスナー層にアピールするのではないでしょうか。(プロモ盤Review)


Jennifer Batten's Tribal Rage - Momentum
Lion Music
(1997/2008)

Jenniferにとって通産2枚目となるアルバム。2008年にLion Musicから再発した2枚のインスト指向のアルバムの一枚ということになります。この「Momentum」は、過去にJennifer Batten's Tribal Rage名義の作品で1997年にリリースされていたそうです。僕自身もギター雑誌の広告宣伝のコーナーに掲載されていたのは記憶に残っていたのですが、確か普通の配給ルートではなかなか入手がし難いCDだっただけに嬉しい朗報です。前回の作品でもワールド・ミュージック的な要素を含む楽曲が登場していましたが、今回の作品ではそういったトライバルなリズムやサウンドをモチーフにしてロックの演奏で料理したようなものが目立っていると感じました。楽曲によっては、非常に自然体でアプローチしたものになっていますが、もっとバンド形態として纏まりがあって非常にスカっとするような痛快なナンバーも個人的には発見できました。

前作では、色んな引き出しを持っていることを証明している内容でありました。今回のアルバムは、幾分かレイドバックしながらも、流麗且つ鋭いギタープレイやテクニカルなソロを繰り出すところは爽快感すらあります。この辺りは彼女ならでのスキルの高さが伝わってきます。Jenniferの脇を主に固めるリズムセクションは、ハードロック系のリスナーにも知られているGlen Sobel (drums)やRicky Wolking (bass)達となっており、Jenniferのプレーを見事にサポートしています。いやー本当にこの2人によるリズムやグルーヴの鋭さには感銘を受けるほど、心地よいものがあります。中にはChris PolandのソロアルバムやMCMの作品に登場しても不思議でないようなヘヴィなロックサウンドで圧倒する場面もあります。シャープで畳み掛けるハードフュージョン的な側面が強い場面も随所に登場して、「オオ!」と身を乗り出すほどです。ミュージシャンシップの高さを要求されるスリリングな楽曲も何曲かあってその辺りは非常にカッコイイですね。時折登場するアメリカン系ならではのレイドバックしたところや、テンポがゆっくりめになってジャム風になる場面もあるので、その辺りで聞き手によっては好みが分かれそうですね。自分も正直言うと、そういったレイドバックしてキャッチーでないギターメロディーやリズムがシンプルになる場面に差し掛かると、分かりににくいというか楽しみにくいなーと感じる時も何箇所か発見しました。

流石は実力者が集まっているだけに音楽的なセンスといい、濃密な展開を見せるインストセクションは本当に感銘を受けました。Jeff Beckなどロック界の重鎮達をも唸らせるものがあり、あちこちの演奏から感じ取れるのではないでしょうか。ところどころで実験的なアプローチが見え隠れしており、典型的な技巧派ギターリストと違うところも彼女のキャリアでは共通しているところであります。アフリカ大陸のサウンドなど普段のロック音楽では耳にすることがない不思議な音が飛び出したりもするのは、Jenniferならではの手法となっています。ところどころでボーカルが効果的に使われていますが、歌がメインという楽曲は殆ど入っていないです。純粋に実力のあるアメリカのミュージシャンによるハードなロックやフュージョン的なインストサウンドが好きなギターキッズには楽しめると思います。Jennifer Battenの音楽やスタイルを知る入門編としては、こちらの作品の方が掴みやすいかもしれませんね。(プロモ盤Review)


Jennifer Batten - Whatever
Lion Music
(2008)

テクニカル系ギターリストというと圧倒的に男性プレーヤーを連想される方が多いと思います。80年代の後半に彗星のごとく現れたJennifer Battenは、女性テクニカル系ギターリストの中でも突出した技術と演奏力を持っている人であります。多くのミュージシャンから注目を集めておりまして、特にMichael JacksonJeff Beckといった大物達とのツアーは彼女にとっても大きなステップや経験になっているようです。かの有名なGITの講師としても著名でありますが、セッションワークやギタークリニックなども数多くこなしていることはよく知られております。さて、この「Whatever」は、Jenniferにとって通産3枚目となるソロアルバムです。感想としては、典型的なギターインストものとは大分異なる印象を持ちました。彼女が得意としているテクニカル指向のギターソロやパッセージは登場しますが、Electronica風なサウンドが目立ちます。また様々な人物やミュージシャンのボーカル(声)のサンプル音などを効果的に使ってます。ボーカルが入っているといっても、それは普通の楽曲のように歌詞が存在しているという訳ではありません。サンプリングされた歌声が、断片的にあくまでも音の一部として使われているということです。

特にエレクトロニカ的な要素を取り入れたのは、Jeff Beckとの活動から影響を受けていることが分かります。決して模倣にはなっておらず、完全に自分のものにしていることは一目瞭然です。ある種の奇妙な音やサウンドスケープといった手法を使って、実験的な要素も含むといった具合にかなり幅広い内容になっています。また楽曲によっては、Michael Jacksonのツアーバンドやブラック・コンテンポラリー系のミュージシャンとの人脈関係とも密接に関わっているのでしょう。ヒップホップ系のサウンドからの影響も随所に見られます。大々的な世界ツアーなどからの経験によるものか、本人の趣味なのか(あるいは両方かもしれませんが)、アフリカンなビートやエスニックなムードが漂うものなどもあります。ワールド・ミュージック的な広がりや雄大さを想起させる部分もあります。この辺りはひょっとしたら、1stアルバムで一緒に仕事をしたMichael Sembelloからの影響があるのかもしれません。

典型的な技巧派ギターリストの作品と共通点が全然無い訳でないのですが、かなり意表を衝かれてしまいましたね。とは言うものの、彼女の冴え渡るような技巧を駆使したギターソロやパッセージは随所に登場するので、その辺りはギターファンには非常に魅力的な部分であります。もっとギターシンセを多用して欲しかったのですが、それほど多くは登場しません。ちなみに1曲目で登場するジャジーなオルガン・ソロはJenniferのギターシンセによるものです。個人的には、4曲目に登場するタイトルトラックの“Whatever”は、ほんのりとScott Hendersonに通じる要素があって、ハっとさせられました。5曲目の“Fearless”は、エレクトリックな奏法で知られているJennifer Battenにしては、大変珍しくアコースティック・ギターで勝負をしております。ベースや手拍子のようなパーカッシブな音も含まれているものの、彼女のアンプラッグドなギター演奏もプロとして流石の技を披露していており満喫することができました。作品全体に言えることですが、幅広い人脈から選出されているだけに、どのミュージシャンの演奏も非常に安定しているのは流石です。

このアルバム全体に言えることは、ロック系ギターリストの作品からは普通は聴くことができない・・・というか余り取らないようなアプローチを大胆に取っています。非常に新しくてコンテンポラリーなサウンドである一方、かなりエクスペリメンタルなサウンドと言いたくなります。本人は実験的な側面を楽しんで取り込んでいますが、聞き手をかなり選ぶ内容も含まれています。しかしながら、作品自体は聴きやすい作りに纏めていることは流石だなーと思いました。どの楽曲も様々な特性や違いみたいなものがあるので、その辺りを中心に攻略していくと次第に浸透していくギターアルバムなのかも・・という結論に達しました。(プロモ盤Review)

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