GEORGE BELLAS
country: United States
style/genre: Neo-Classical HM, Guitar Instrumental, Symphonic Metal, Prog Metal, etc.
website: http://www.georgebellas.com/
related bands/artists: Palace Terrace, Marco Minneman, John West, Vitalij Cuprij, Marco Ferrigno, Ring of Fire, etc.
similar bands/artists: Marco Ferrigno, Vitalij Kuprij, Artension, Cacophony, etc.
artist Info: ネオ・クラシカルHMとProgMetalの両方を得意とするミュージシャン。近年はLion Musicよりアルバムをリリースしている。



George Bellas - Turn of The Millenium
Sharapnel Records
(1997)

Mike Varney率いるシュラプネルが久しぶりにプッシュした、アメリカン風な様式美HMタイプのテクニカル・ギターリストの1stアルバム。このアルバムが面白いのは、ネオクラシカル様式美HMの要素に色濃いものの、プログレメタルやシンフォニックメタルのアプローチもたくさん導入されていることですね。90年代以降、Shrapnel Recordsからリリースされるアルバムはどちらかというとフュージョン的なスタイルを色濃く感じさせるタイプのものが割と目立ったわけですが、ここまで弾きまくりのネオクラシカル系のタイプは久しぶりだったのが記憶に残っております。プロダクションに関しては最後の詰めが、甘いというのは否めないかもしれません。しかし、Shrapnel Recordsというところは、御存知のようにアーティストがアルバムをリリースするところまでは世話をするけど、ライブツアーやその後アーティストをサポートにすることに関しては全くノータッチであったりという話をよく聴きます。ギターファンにとっては、「なんとか演奏面だけでも楽しめれば」という形でサウンドの出来具合に関しては、少し目をつむらざるを得ないのかも知れません(ま、僕はそんな感じなんですけど)。

音質やプロダクションはさておいて、このアルバムに参加しているミュージシャンは優秀なプレーヤーが固めているので演奏面やソロ、リズム的なパターンなどは非常にいいと思います。主人公のGeorge Bellasのギターソロに関しては、弾きまくり過ぎなのでリスナーによってはかなりキツイなーと感じるかもしれません。だけど、僕自身はこういう弾きまくりは、音楽にマッチしていれば問題ないと考えるタイプなので、全体的には楽しむ事ができました。Dali's DilemmaMatt GuilloryのキーボードソロやArtensionKevin Chownによるベースプレー、そしてDean Castronovoのドラミングなどは、流石でありますね。 個人的にはアルバムの半分を占有しているプログレメタル的アレンジの楽曲群が面白かったです。これらは、どことなくArtension + Zero Hourに通じるところや、それ風な雰囲気も少し感じられたりするものも、ありました。面白いアプローチだと思います。うーんせめてVinnie MooreTony MacAlpine級のサウンドにもっとこだわってくれていたならば、さらに楽しめていたのだけど。 正直言って、このアルバムは聞く気分や雰囲気や環境によって、凄く楽しく聞ける時とそうでない時があります。

タイミングが悪ければ、ちょっとジョージのプレーがやり過ぎというところもあります。でも全体的には、僕個人はかなり楽しめました。ネオクラシカルタイプのHMとシュラプネル特有の音に、プログレメタル的なアプローチを絡めたタイプの音楽全部に、興味を持っている人はひっかかるものがあると思います。だけど一般的なリスナーのレヴューを読ませていただくと、非常にきびしい評価をしている人もおりましたが、なんとなーく気持ちは理解できます。僕はこのアルバム好きなんですけどねー。本来のシュラプネル系の伝統をひきつぐ、最後のギターソロイストの一人という感じでしょうか。推薦盤とはいえないかもしれませんが、ちょっと興味が出てきた方は、中古屋さんへGO!。(購入盤Review)


George Bellas - Venomous Fingers
Lion Music
(2003)

北米出身のネオクラシカル系ギターリストGeorge Bellasが、Lion Musicから2003年にリリースした久しぶりのソロ・アルバムです。以前はShrapnel Recordsからアルバムをリリースしていましたが、どうやら完全にLion Musicへ移籍が決まったのでしょう。現時点ではShrapnel Recordsから新しい作品は出していないことからも、そういった事情が理解できるように思います。以前も紹介したように、George Bellasの場合はネオクラシカル系メタルの音楽をベースにしていますが、それだけを信条にしている訳ではありません。楽曲がロングフォームな形態になるとProg Metal風なアプローチを導入している部分も登場するといった具合になっています。またShrapnel Recordsに所属している有力なアーティスト達に共通するように、ソングライティングの中にもテクニカルな要素を強調したものが顔を出しているところが個人的には耳を惹くというところであります。

Lion Music移籍後の最初のアルバムということで、どこかで気持ちの整理がついたようなものさえ感じられます。Yngwie Malmsteen辺りの影響を色濃く出したNeo-Classical寄りなギターの高速弾きをする場面は、これまでと共通する内容であります。しかしながら1stアルバム辺りと比べると、彼の作品の中でも「Venomous Fingers」の場合は、楽曲のアレンジは極端に難解なイメージは殆どありません。もちろん変拍子を導入したコンプレックスなアンサンブルは随所に出てきます。ですが、全体を見渡してみるとGeorge Bellasの作品の中では、意外なぐらいにストレートな作りになっています。Shrapnel時代と明らかに違う点で言うと、この作品に限定していうとゲストミュージシャンは皆無となっています。演奏パートはギター・ベース・キーボードを含めて全てGeorge自らが手がけています。当然なことですが、彼の高速弾きと音符の数は大変なことになっています。これだけ弾きまくれると、実際に演奏をしている本人はかなりエンジョイしているんだろうなーと思います。ただし、ネオクラシカル系の速弾きスタイルが苦手なリスナーは、この辺りでかなり食傷ぎみになることは覚悟しておいてください。とはいえ、彼の作曲アプローチやアレンジの仕方は結構な個性派だと思うので、密かに応援しているんですよね。ソロと楽曲の棲み分け、どうやって上手くバランスを取って魅力的な楽曲に仕上げていくのか。Georgeにとっては今後も試行錯誤の連続になりそうですね。

ひょっとしたら、まだこの作品は彼にとっての再出発の第一段階だったのかもしれません。シンフォニックメタル的な要素、もっと分かりやすい部分も取り入れて新しい技巧的なネオクラシカル・メタルを模索していたのかもしれません。ゲストミュージシャンがいないせいか、やはり音的にはもっと厚みや奥行きの欲しいサウンドにするのは困難だったことも印象に残りました。個人的には、1stアルバムで見られたテクニカル指向で複雑なアレンジのProg Metal要素の強いNeo-Classical/Symphonic Metalサウンドがもっと聴きたかったのが正直なところです。全て一人で取り仕切っているので大変だとは思いますが、サウンドプロダクションの向上を期待したいところであります。変な話、このアルバムは彼のキャリアの中ではベストな部類の作品には数えられないように思いますが、ネオクラシカルメタルやシンフォニックメタル風味の強いギターソロ作品に興味を持っている人にはアピールする内容は含まれているように思います。とりあえずは、George Bellasが元気に頑張っているということが伝わってくる作品であります。(プロモ盤Review)


George Bellas - Planetary Allignment
Lion Music
(2008)

Shrapnel Recordsからデビューしたことで知られているGeorge Bellasの最新作「Planetary Allignment」です。2000年代以降に入ってからは、Lion Musicから作品をコンスタントにリリースして頑張って活動しているNeo-Classical Metal系のギターリストです。2007年の暮れに歌モノプロジェクトであるPalace Terrace名義でアルバムを出したのが記憶に新しいですが、ここ最近は前にも増して音楽制作に調子が出ているのかもしれません。前回リリースしたVenomous Fingersは、割と「こじんまり」としたような佇まいで嵌るまでには、残念ながら至りませんでした。ところが最新作の「Planetary Allignment」の内容は、前作の迷いみたいなものがすっかり取れたかのような印象を受けました。George Bellasらしいテクニカル且つ複雑な構成になっていて、楽しませてもらいました。変拍子をたくさん導入したシンフォニック寄りなネオクラシカル・メタルサウンドが全編で展開されています。何やら1stアルバムのTurn of The Milleniumを彷彿とさせるような原点回帰のようなものも感じます。その一方で、できる限り分かりやすくをモットーにしている様子も伝わってくるかのようです。色んなリスナーに聞いてもらいたいという気持ちは念頭に持ちつつも、内容的には凝った路線は貫いてくれているのが嬉しくなります。典型的なネオクラシカル路線は自身のギターソロから強く感じられますが、楽曲構成はシンフォニックメタル的とも言えます。プログレメタル的な要素は、主に変拍子を導入した凝ったリズム展開や畳み掛ける部分から感じられます。1stアルバムのような感じで、普段聞いているような正統派のProg Metalとは雰囲気は随分違うなーと思いました。まあ、この辺りは彼独特のスタンスなのが、個人的には興味深いと言えます。Yngwie MalmsteenSymphony X的なサウンドや方向性に実は酷似しているように聴こえるときもありますが、実はよく聴くとアプローチはかなり異なっていることが良く分かります。むしろ現代音楽や映画サントラで聴かれるような壮大なものを狙っているかのようで、そこら辺が本人の持ち味でありましょう。この作品ではテクニカル系ドラマーとしてMarco Minnemanを迎えている以外では、全ての楽器やプロデュース等はGeorge自身が担当しています。彼がこれまでにリリースしたアルバムの中では、楽曲や完成度から見てベストな部類と言っても良いかもしれませんね。(プロモ盤Review)


George Bellas - Step Into The Future
Lion Music
(2009)

前作の"Planetary Alignment"から数えて、約1年ぶりとなるGeorge Bellasのニューリリース。この"Step Into The Future"は、1曲まるごと75分という具合になっているのがビックリです。CDに収録できるギリギリの長さに挑戦したものになっていますね。 最近は音楽制作に意欲的なのか、内容的には随分気合が入っているのが端々から感じられます。George Bellasというと、多くの人が様式美ネオクラシカル系のギターリストというイメージを持っていると思います。しかし、前作のソロ作品や彼が中心となっているバンドのPalace Terraceなどを聴いて分かるように、最近の彼の音楽性は全体的に見ていくとネオ・クラシカル系らしい雰囲気は大分薄まっています。むしろシンフォニック・メタルやプログレメタル系の領域内に生息しつつ、自分のカラーを加えて独自性を出しています。

今回の作品"Step Into The Future"では、前作と同じように比較的新しい音楽理論を取り込んだものにチャレンジしています。我々が想像しがちなネオ・クラシカル系とは、大分違った方向性を狙っています。ドラマーは前作でも大活躍だったドイツ出身のMarco Minneman (UKZ)を迎えての制作になっています。前作は割とスピード感に溢れているような印象を受けました。新作では、普段使われないような調性や不協和音、コンプレックスなビートを含んでいます。これは私だけなのか良く分かりませんが、意外と分かりやすく聴こえてくるように感じるのが不思議です。想像していたようなウルトラ・ハイパーな難解さは余り感じないです。場面転換や展開する部分もあちこちで登場しますが、連結部分が自然に聴こえるように工夫の痕跡を見ることができるでしょう。

前作同様、ギターを中心に殆どの楽器はGeorge Bellas本人が担当しています。キーボードやピアノなどの音が、割と多く聴こえてきます。キーボードとギターによるシークエンシャルなフレーズを繰り出しているところは、おおいに楽しむことができました。シンセサイザー系のソロが活躍する場面も多く、タイトルにも通じる近未来的なシンセソロも随所に出てくるのが嬉しい。意外や意外で、キーボードのソロやリード音は結構楽しめる部分が多くて、全体的に耳に心地よいほどです。面白いことに今回は前作と比べるとギターの弾きまくり度は大分控えめになっている感じが致しました。ギターのソロは、彼の作品の中でも少ないほうです。目立つ弾きまくりのソロは50分以降に何回か登場する感じで、思った以上に少なめにしていますが、むしろこれぐらいの方が飽きないで聴けますね。ソロの組み立てや即興風のプレーも、ネオ・クラシカル風なお決まりのメロディック・マイナースケールの多用は確実に避けています。良く聴いてみるとネオクラ的なフレーバーも確かにあるのですが、個人的には余り強く感じなかったぐらいです。ギターやベースの音の歪みやヘヴィー度もかなり抑えています。

ひょっとしたら、Spock's BeardKarmakanic辺りの現在活躍している話題のプログレッシヴ・ロック勢から大きく刺激を受けたのかもしれません。正直言って聴く前から、「うひゃあー、75分もあるのか?」と気が遠くなりそうになりました。親切なのか不親切なのか分かりませんが、トラックごとには分割されていません。ちょっとセコイかもしれませんが、自分の場合は、とりあえずパソコンでアルバムを聴いてみることにしました。アルバム最初の15分、中盤の大部分、そして残りの後半部分という感じで3等分ぐらいにして聴いてみました。まあ反則な聴き方かもしれませんが、これならダレずに集中して楽しめると思います。このアルバムの場合は、本人もプログレッシヴなロックに挑戦したいという目的が如実に伝わってきます。ギターの歪みも軽めにしているので、耳に負担を感じることはありませんでした。

序盤出だしで変拍子が活躍するパートが面白いですが、暫くは静謐なパートでちょっとテンポというか雰囲気が落ち着くので、その辺りは冗長に感じられかもしれません。その後は、10分以降のパートからテンションが再び上がっていきます。暫くすると、やや大人しくなっていきます。再び22分ぐらいから30分ぐらいで、エキサイティングになって面白くなってきます。中盤辺りでは37分を超えた辺りの部分、44分辺りを超えた部分はリズムが速くなっていきます。変拍子も上手く組み込んでおりますね。49分以降、そして53分以降では、確かに聴いていて思わず体でリズムを取ってしまうところが多いです。それにしても、Marco Minnemanのインプットや力量は大変素晴らしいと思いました。前作よりはMinnemanの活躍度が上がっていますが、彼のファン層にとっては大人しく感じるかもしれません。充分Prog Metal/Rock路線が好きな人にも楽しめるパートが用意されているので、そういったインスト陣のコンプレックス度が増してくる部分を中心に楽しんでいただける筈です。

全体が醸しだしている雰囲気は、本人が得意としている宇宙や時空の超越をテーマに取り上げているせいか、前作に繋がる雰囲気もあります。遡って行くと、George Bellasの原点とも言える1stアルバムの"Turn of the Millenium"に通じるスリリングな場面も当然あるでしょう。ほんのりと、イタリアのCosmicsPlanet X等を想起させるようにも感じました。特に演奏パートの中でも、シンセ・リードとドラムパートが主に交錯するような部分では、瞬間的にでありますがShadow Galleryの1stや2ndに通じるかもしれないと思うほどでした。サウンド的にもアイデア的にも進歩や向上は遂げているとは思います。ギターソロの演奏場面に入ると、いつもの彼独特のドライな音作りみたいなのが気になりだします。あまり歪みの無い音にして、極力クリーンなサウンドを心がけているのかな?とは思います。ですが、どうもパンチの無い音になっちゃっている気がして勿体無いというか、この辺りは好みはハッキリと分かれることでしょう。ただし、前作辺りからはドラムの音の録音に関して言うと、生のダイナミズムをより強調したものになっております。この辺りはMarco Minneman自身が持つドラミングの技量の高さ、そしてパフォーマンスに由来するのでしょう。1曲1枚という内容でありますが、リズムパターンは面白いですし起伏のあるダイナミックな作りに挑戦しているところは評価したいですね。(プロモ盤Review)

 (←いきなり音が鳴るかもしれないので注意して下さい)

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