CHROME SHIFT
country: Denmark
style/genre: Prog Metal
website: http://www.chromeshift.dk/
similar bands: Wolverine, Pain of Salvation, Poverty's No Crime, Tomorrow's Eve, Threshold
artist info: DVS Records所属のメロディアス系Prog Metalバンド
discography: Ripples In Time (2003)



Chrome Shift - Ripples In Time
DVS Records
(2003)

昨年の暮れ辺りからデンマークのIntromental Managementがプッシュしてきたメロディアスな方向性を重視しているChrome Shiftが春にデビューアルバムRipples In Timeをリリースし、海外のProg Metalファンの間でも話題になっています。うちのサイトでもお馴染みとなっているMattias Noren氏が、美しくも現代的なアートワークをてがけています。ここ近年のDVS Recordsの活躍と、タッグを組んでいるIntromental Managementの働きには注目すべきものがあります。そのタッグチームによって、様々なProg/Power Metal系リリースが今後も期待されています。さて、このChrome Shiftは今年に入るまでDVS RecordsがWolverineHeaven's Cryの新アルバムに続けて大きくプッシュしているバンドだけに、どういうサウンドの音楽を表現しているのか楽しみでありました。

バイオやリリースインフォを見る限り、Chrome Shiftのメンバーはかなり若手が中心で構成されています。デンマーク出身といえば他に挙げられるProg Metal系バンドとしては、Psychotic Waltz/Dream Theater寄りの音楽性を見せていたBehind The Curtainや、Crimson Glory/Fates Warning的なLordbaneといったバンド達が存在しています。Chrome Shiftの場合は、彼らとは、また違った個性をもっているように見受けられます。全体的なサウンドで言うと、割合音楽性は分かりやすく、メロディアスでキャッチーなProg Metalサウンドという印象です。彼らの場合は、凄まじい個人技を全面的に繰り出すタイプではありません。むしろ、ソリッドでキャッチーかつコンパクトな楽曲作りに専念していますので、初めて聴いても親しみやすいサウンドと言えます。頻度で言えば、Jakob Lund Paulsenによるデジタルなキーボードソロが多少フューチャーされています。ギターソロはアンサンブルの味付けとして、さらりと登場するという感じなのでテクニカルなギターソロを求めているリスナーには、その辺りがもどかしいと感じられるかもしれません。割合ソロよりもバンド全体のアンサンブルを重視しているようです。楽曲によっては、ここぞとばかりに、コンプレックスな内容を楽曲で提示しています。とにかく難解になりすぎないように、インストセクションは構成されていますし、バンドのアンサンブルと歌のメロディーライン両方が見事にお互いを引き立てる味付けに仕上ているところも、やるなーと思いました。どの楽曲においても、サウンドやプロダクションは良好でありまして、ダイナミックな部分と繊細な部分にも気配りしている様子が伺えます。

確かにスタイル的には、どういうタイプのバンドに割合近いかと考えていくならばWolverinePain of SalvationそしてStonehengeといったバンドに通じるものがあります。サウンドの処理の仕方や雰囲気などは部分的であるものの、案外初期のLanfearや、Threshold, Andromedaが好きな人にも受け入れてもらえるかもしれないという印象もあります。面白いことにDVS Records出身のバンドやアーティストは割と音質が良好なのが一般的で、Chrome ShiftにとってもRipples In Timeがデビューアルバムでありますがこの作品が初めてのリリースとは思えないほど、かっちりとした仕上がりで聞きごこちが良いです。このアルバムは、Chrome Shift全員によってプロデュースされており、エンジニアリング・ミキシング・マスタリングなどの技術的な面はJakob Hansen氏がてがけています。各楽器陣やボーカルのバランスも上手く調整されており、それぞれがクリアかつウォームな仕上がり。

各メンバーの働きについて見ていくと、シンガーのRusmus Bakはミドル・レンジを中心とした歌い方を得意としている。ちょっと誰に似ているか思う浮かぶシンガーが見当たらないが、低い音程からある程度の高い音程辺りも無難にこなしている。ギターリストのOtt Shuttは基本的にはギターリフやアンサンブルにおいて印象的なフレージングを担当している。テクニカルなソロを弾くというタイプの人ではないようだが、ブルージー寄りなプレーとバッキングでのクランチ-なサウンドで活躍している。Paul Terkildsenによるドラミングは、的確でアンサンブルにおいての要となっている。ベーシストのJens Christian Nielsenは、底辺を支えつつも印象深いラインやフレージングを担当しているが、音楽面でこの人は大きなイニシアチブを持っているようでアルバムに収められている楽曲の作曲面や歌詞の制作面でも、彼のアイディアが主に使用されている。鍵盤奏者のJakob Lund Paulsenがこのバンドの中では比較的ソロを取ったり、演奏面において前面に出ているので、中心的リーダーと思っていたのだが、意外にも上で挙げたJens Christian Nielsenと比べると彼が手がけているクレジット率は、やや少ない。

このアルバムは春からリリースされて、コンスタントに聴いているが楽曲指向なので、アルバム全部を通しで聴きやすい構成になっていると思います。楽曲やボーカルを中心としたアンサンブル指向ではありますが、個人的にはもっとテクニカルに攻めてくれる作風のものをたくさん導入してくれることを期待したい。ただ、このアルバムの中でもインスト指向を強めた楽曲が何曲かあって、"Shadowsong", "Kosmonanten Er Dod"や"Le Temps Des Assasing"のようにコンプレックス且つテンションの高いプレーも用意していて、若手ながら中々の実力を持っていると感じさせた(ただテクニカルなソロを押し出すタイプとはまた印象は異なる)。ハイライトは、アルバムの最後に収録されている組曲形式の"Ripples In Time I-IV"が聴き応えありました。今年は、Sweden Rock Festivalや2003年に行われた第5回目のProg Power Europeにも参加したりと、比較的ライブ活動も欧州や本国では定期的に行っており、今後はそういったライブでの経験を元に、次回もさらにグレードアップした作品を期待したい。次回作もリリース予定だそうだ。楽しみに待っていきたい。何はともあれ、今後に期待の実力を秘めた新人さんです。(プロモ盤Review)

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