COSMICS
country: Multi-National
style/genre: Prog Metal, Hard Fusion, Technical Instrumental, etc.
website: http://www.myspace.com/cosmicsproject
related bands/artists: Daniele Liverani (Empty Tremor/Khymera), Tommy Ermolli (TwinSpirits), Virgil Donati, Rufus Philpot, etc.
similar bands/artists: Planet X, Daniele Liverani, Empty Tremor, TwinSpirits, Parallaxe, etc.
artist info: カール・セーガンの著書「The Dragons of Eden」の話を土台にしたスペーシーなProg Metalインスト系プロジェクト。



Cosmics - The Cosmic Year
Lion Music
(2008)

Cosmicsは、イタリア出身のマルチ・プレーヤーDaniele Liveraniが中心となって結成されたグループです。Daniele Liveraniというと自身のソロ活動だけでなく、Prog MetalタイプのEmptry TremorTwinSpiritsなどに関わっていることで知られている人物です。またKhymeraGenius Projectと言ったように一般のHR/HM系のリスナーにもアピールする作品も並行してリリースしています。このグループでは、今までと同様キーボード奏者として活躍をしています。気になるCosmicsの他メンバーは、昨年デビューしたイタリア出身のTwinSpiritsから若干20歳のテクニカル派ギターリストTommy Ermolliが参加していることが注目です。Tommyの場合も、前回紹介したAlberto Rigoniに似たような感じで、自分の本体グループよりも派手で自由に弾きまくっている場面が多いです。リズム隊としては、豪華なことにPlanet Xのメンバーとして実力が知られているRufus Philpot (bass)、そして超絶技巧ドラマーのVirgil Donatiが参加しております。

1stアルバムのThe Cosmic Yearは、単なるテクニカル指向のインストProg Metalというのとは、大分趣きが異なっております。インスト作品としては珍しく、宇宙科学や惑星研究などでも大変有名なアメリカのCarl Sagan(カール・セーガン)博士の著書「The Dragons of Eden」の内容からインスパイアを受けたコンセプト・アルバムになっています。本の主要なテーマや全体像は、地球の誕生から人類文明の発展に関するものになっています。細かく見ていくと、「生命の誕生」や「進化に関する考察」、「人間文明の発達」や「宇宙探査に至る時代」までが描かれています。以前はこの分野に関心が余り無かったのですが、正直かなり興味をそそる内容だと思います。宇宙は約137億年前に誕生したという説が現在は普及しておりますが、セーガン博士が出した当時の著書の中では、宇宙は約150億年前に生まれたという文脈で話を進めていることを留意しておいてください。

宇宙の誕生から人類による探査計画に至るまでの長い年月を分かりやすくするために、気が遠くなるほど長い150億年という歴史を1年に置き換えた「The Cosmic Year」という宇宙カレンダーを通して、セーガン博士の見解が展開されていると言ってよいでしょう。宇宙の誕生から現在に関わるまでの地球年代記の主要なテーマに合わせるために、Cosmicsの場合は音楽制作や準備は、相当大変だったように推察します。しかし、この難しい題目に果敢に挑戦するだけでなく、セーガン博士の描いている壮大な宇宙絵巻ともいえる宇宙カレンダーの主要テーマを忠実に表現することに成功しているように思いました。畳み掛けるような緻密な演奏が展開されている部分は、Planet Xを彷彿とさせる部分が顕著であります。Virgil Donatiの凄まじいリズムワークを始め、参加しているメンバーがツワモノだけに抜群の安定感があります。Daniele LiveraniのキーボードによるソロやサウンドからEmpty Tremor的なエキゾチックな部分を垣間見ることができる場面もあります。この作品の注目は、Tommy Ermolliによるスリリング且つ流麗なギターワークでしょう。

全編が複雑緻密で押し通している訳ではないので、割とすんなりと聴ける内容になっているようには思います。宇宙的な広がりや生命体の躍動感みたいなものを想起させる一方で、正直言うと「最初は、とっつきにくい部分もあるかもしれない」ということは覚悟してください。キーボードの演奏自体はギターとの高速ユニゾンなども含めて非常に頼もしいのであります。場面によっては、キラキラした宇宙的なキーボードの音色が逆効果になっていて、足を引っ張って本来パワーのある部分を削いでしまっているような印象を少しだけ持ちました。むしろ全然キーボードの音が無いところがあっても、悪くはなかったのではないでしょうか。その辺りは今後の課題と言えそうですが、特にシンセサイザーの音色に関する部分を工夫していたならば、さらにグっと魅力は増していたかもしれません。壮大な宇宙や人間のロマンに思いを馳せるかのような、作り手側の意欲度はビンビンと伝わって来ましたよ。

聴き始めの頃は、アルバムの内容やタイトルも殆ど見ることが無かったせいもあって、嵌るまでに随分と時間がかかりました。そこでアルバムを繰り返し聴く一方で、セーガン博士に関わる記事を斜め読みしていくうちに、アルバムの内容やサウンドが次第に面白くなっていきました。まあ、本当はそんな小難しいところを強く意識しなくても良いのかもしれません。プレイ・リストの曲名やサブタイトル等から具体的な内容は、おのずと大体分かってくるようになります。ハード・フュージョン系やクロスオーバー的な側面も感じられますし、メタリックで複雑な演奏や変拍子が交錯するような箇所も登場するところはゾクゾクさせられます。その辺りを中心にインスト指向の作品を楽しんでいるリスナーには、次第に浸透していく筈です。このアルバムに嵌るまでには、確かに時間が掛かるかもしれません。セーガン博士の記事や本の内容に触れながらCosmicsの音楽と接していくと、面白さは確実に増してくると思います。根気よくトライしつづけることが、The Cosmic Yearというアルバムを楽しむポイントかもしれません。(プロモ盤Review)

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