EBONY ARK
country: Spain
style/genre: Prog Metal
website: http://www.ebonyark.tk/
related bands/artists: Arwen, etc.
similar bands/artists: Overlife, Headline, Pyramid, Symphony X, After Forever, Dreams of Sanity, Dream Theater, etc.
artist Info: 女性ボーカリストBeatriz Albertを中心軸に、メロディアスかつハードな演奏を得意とする。



Ebony Ark - s/t
Independent Release
(2004)

この作品は、スペイン出身の新人Prog MetalバンドのEP盤になります。どうやら日本でもアルバムを出している同郷のシンフォニックメタル系バンドのArwenとも深い間柄のようであります。スペインという国も、どうやらかなりプログレメタルタイプの音楽性が好まれているようで、これまでにもPyramidOverlifeなどのように、演奏的にも充実したバンドを輩出しております。このEbony Arkは、先輩格の彼らにひけをとらない音楽性と演奏面を持っているように感じさせました。実はこの作品は、正規のフルレングスアルバムではありません。テスト的な自主制作EP盤で、映画フラッシュダンスでお馴染みのアイリーン・キャラの名曲What A Feelingのカバーを含む、計6曲が収録されております。メンバーは、紅一点のBeatriz Albert (lead vocals), Ruben Villanueva (guitars/backing vocals), Javier Jimenez (guitars/backing vocals), Daniel Melian (bass/backing vocals), そしてJorge Saez (drums)という構成になっていますが、4曲目にArwenのメンバーが何人かサポートしております。

このバンドが、他のプログレメタルバンドと多少異なる点があります。この手のスタイルとしては珍しく、女性ボーカリストがProg Metal然とした音楽の中でオペラティックな手法や、フィーメール系ならではの可憐で美しいソプラノの音域を武器にしているところであります。ブックレットの写真をみるかぎりでは、Beatriz Albertは、可憐なルックスの若い女性ですが、決してあなどってはいけません。NightwishのTarjaのようにアカデミックな歌い方に心得がある様子が伺えます。しかしオペラティックな声域ばかりを強調するだけでなく、自分の声に忠実に時にはポップな感じで歌っているときもあります。意外なことに男性ボーカルの影響も、彼女の場合強いようで、少しタフでイービルな路線も強調したり、出しておりました。僕個人の意見としては、女性的な歌い方をより洗練させた方がよいのではないか?と感じましたが、Beatrizさん良く伸びる声で頑張っておりました。

一方の演奏陣でありますが、非常にソリッドで逞しいプレーヤー達という印象が強く変拍子やコンプレックスなアンサンブルも見事にこなしていますね。彼らの場合は、ソング・オリエンテッドな方向性を重視していますが、随所で見られるインストセクションの濃密さなど、素晴らしいものを持っていると感嘆しました。決してド派手に攻めまくるやり方ではないですが、とてもセンスがいいと感じます。おそらく他のテクニカル系プログレメタルバンドのように、本気を出せば幾らでも凄い演奏を繰り出すことは難なくできるけど、あえてその方面に行かないという印象も同時に感じました。

インディーズの作品ながらも、音のバランスも考えており、特にドラムの鳴りやベースの音色など暖かみのあるトーンで良い出来栄えになっているという感想です。個人的には、いろんな展開が楽しめる4曲目のFarewellという楽曲は、彼らの中でも秀逸な出来栄えに仕上がっています。ノリのいい変拍子、スムーズなテンポチェンジやリズムの切り返し、練られたアンサンブルに印象的で扇情的なメロディーラインやエレガントな要素も入れるなど、いい楽曲にまとめていて楽しめました。このアルバムを制作した時点では、キーボーディストはおりませんが、印象的なキーボードのフレージングやバッキングも耳にすることができました。またアップテンポで疾走感あふれる曲から、それこそDakruaAfter Foreverに通じるシンフォ・ゴシック風味なオーケストレーションを施した楽曲など、技術的に高いものを要求されるプログレメタルのスタイルを中心としながらも音楽性に広がりも見られました。ただカバー曲のWhat A Feelingは、メタル的な音質で表現するのはミスマッチだったのは、少し残念でありました。

彼らのオリジナル楽曲に関しては、充分楽しむことができました。今後どうフィーメールボーカルをいかした面白い作品を継続して作っていくかが、焦点となってくるでしょう。どうやらスペイン本国では、すでにフルレングスアルバムを完成させたという話も聞いております。近いうちにフルレングスアルバムが、シーンに登場する日もそう遠くないでしょう。現在かなり活発にライブギグや、国内のフェスティバルにも参加を重ねているので、たのもしい限りです。ライブというシチュエーションでも、これだけ完成された演奏やステージングをこなしていけば、より熟成されてくることでしょう。うちのサイトでも応援していきたいProg Metalバンドの一つです。(プロモ盤Review)


Ebony Ark - Decoder
Transmission Records
(2005)

スペインを拠点に活躍しているEbony Arkが2005年にリリースしたフルレングス1stアルバム。以前に聴いたEP盤の出来具合に満足していた自分にとっては、この1stアルバムの内容に興味を持って聴いてみました。この作品から専任キーボーディストが加入しています。さて、気になる中身でありますが、インストを含む序盤の2曲を聴いた時は若干戸惑ってしまいました。なんとシンフォニック・パワーメタル寄りのスピーディー且つストレートな内容になっており、音楽性に変化が見られることであります。しかし、以前と比べるとギターやキーボードが活躍するソロの度合いが多少増えていますね。バンドの紅一点、Beatriz Albertの歌とシンフォ・メタルが相まって、NightwishAfter Foreverを想起させるところがありました。最初は全編、Prog Metal直系のスタイルを継続していると予想していたので、意外というかちょっとビックリしてしまいました。しかし、アルバムの中盤以降では、EP盤でも展開されていたProg Metal然とした内容に大変近く、EP盤で大変印象深かった"Farewell"を含む3曲が収録されているのでグイグイと引き込む力を感じました。全体を聴いて思ったのは、バランス良く色んな楽曲を提示してきてシーンに躍り出てきたという感想を持ちました。スローなバラード風なものもありますし、スピーディー且つシンフォニックなパワーメタルなどはEvergreyにも近い雰囲気があります。やはり緻密で複雑なProg Metalのパッセージが顔を出すところは痛快です。そして演奏面でも変拍子やリズム面、テクニカルなアンサンブルの絡みが多く登場する場面は素晴らしい。こういった辺りは、Dream Theaterの影響を上手く導入して、自分達のスタイルに昇華させています。全般的にはメロディアスでキャッチーな楽曲作りにしているので、シンフォニック・メタル系を中心に好む人にアピール度が高いかもしれません。それぞれの楽曲には、聴き応えのある印象深いフックも兼ね備えているところは、正式な1stアルバムとしては良く頑張っていると思いました。Prog Metalファンは、このアルバムの中盤以降や、その周辺のアンサンブルや変則ビートが強調された場面を中心に次第に浸透して楽しめると思います。ある意味、女性ボーカルを含むシンフォニック風味の強いゴシックメタル系バンドが演奏面を強化して、プログレッシヴ指向の音楽性を追及したら、Ebony Arkのような感じになる一例かもしれません。(購入盤Review)

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