Emir Hot - Sevdah Metal
Lion Music
(2008)
東欧はボズニア・ヘルツェゴヴィナ出身のギターリストが現在少しずつメタルシーンで話題になっています。作品のタイトルがSevdah Metalとついているので、何だろう？と思っていました。どうやらSevdahというのは、バルカン半島にある伝統フォーク音楽の一つだそうであります。意味合い的には、アメリカでいうブルースに近い世界観だとか。さて気になる内容ですが、これが高品質なネオクラシカル・パワーメタル系アルバムになっております。この作品に挑戦する前は、普通のギターインストものかな？ということぐらいしかイメージがありませんでしたが、内容は非常に良い仕上がりになっていると僕も思います。自分の場合は、最近は積極的に新しいNeo-Classical HM系のギターリストの作品をチェックすることが殆どありませんでした。Emir Hotの音楽はバンド路線が強く、楽曲の作りも上手いので多くのHR/HM系リスナーにアピールすることでしょう。
核となっているメンバーは、当然Emir Hotのギターを始めとして、ドラマーは数々のセッションでお馴染みのMike TerranaやリードボーカルとしてJohn Westなどが主に活躍しています。その他キーボーディストなどを始め、色んなゲストミュージシャンが活躍する場面も用意していて作風には色んな起伏を作り上げています。ただし典型的なネオクラシカル系というよりは、フォークやエスニックな要素も上手くブレンドしていることが大きな特徴の一つとして挙げられます。楽曲はどれもキャッチーで疾走感あり、躍動感が漲るものありと一般のハードロックやメタル系を主食としている人たちの心を掴む要素があるのが流石です。ギターインストやキーボードが活躍する場面などは、ある意味シュラプネル系のインスト路線を彷彿させて「オオー」と思ったり、ひょっとしたらElegyやYngwie Malmsteen辺りが好きな人の心を鷲づかみにしそうです。ストレートで欧州パワーメタル的な要素が強くなるところでは、Stratovariusなどを彷彿させるところもあるかもしれません。その辺りの路線が好きで楽しめると感じるか、そうでないかは分かれるかもしれません。
個人的に面白いと思ったのは、凝ったアレンジのタイプのナンバーなどは、曲のテーマに合わせてドイツのRough SilkやアメリカのSavatageに通じるかのようなドラマ性やエモーショナルな要素も含んでいてグっときました。重厚且つ突進するオープニングのDevils In Disguiseはハイライトの一つといえるほど素晴らしい楽曲となっており、Symphony XとSilent Voices辺りが好きな人を振り向かせるでしょう。またゲストとして参加している数名のアコーディオン奏者のパフォーマンスがどれも非常に優れていて、ハっとさせられるほど新鮮でした。全体的には確かにYngwie MalmsteenやTony MacAlpine的なネオクラシカル様式美メタルの良さがたっぷりと楽しめる内容なので、メロディックパワーメタルが好きな人は要チェックだと思います。気になる本人のギター演奏も非常にさえ渡っており、確かにネオクラシカルの流派も通っていますが、Patrick RondatやTony MacAlpine的な雰囲気やスタイルを持っているような印象を持ちました。
元々はボズニア本国でバンド主体の活動を長いこと行っていたEmir Hot。しかし、皆さんもご存知のようにボズニアや旧ユーゴスラビアが紛争地帯として情勢や状況が不安定などの理由で、現在はイギリスに移住しております。セッションやワークショップなどを中心とした音楽活動を展開しながら頭角を表わしつつあります。彼にとって朗報なのは、このSevdah MetalがMetalシーンでは良好な評価を得ていることです。今後は欧州を中心にツアーの予定も立てているようで、頑張ってもらいたいものです。この作品は、全体的に結構楽しむことができる内容で満足できました。なかなかに力強い作品となっているので、興味があるかたはMySpaceへGOしましょう。http://www.myspace.com/emirhotguitar (プロモ盤Review)