Evil Wings - s/t
Underground Symphony
(1994)
現在も活発に活動を続けているイタリア出身のグループ。ある意味、重鎮的存在の一つとして数えられつつあるEvil Wingsの記念すべき1stフルレングスです。1994年にリリースということから分かるように、彼らはかなり早い段階から自分達独自のProgressiveな感性を導入したハード＆ヘヴィな音楽を追求しております。彼らの場合は、アルバムをリリースするごとに次第にサウンドの形態を変えており、3rdや4th辺りではまるで別物バンドとも言えるほどグルーヴやサイケデリック的な色合いも加味したプレースタイルに変貌を遂げております。
さて、この1stアルバムは、割とGarden WallやIvanhoeなどにも通じるかのような、WMMS/Music Is Intelligence系のシンフォ寄りProg Metalタイプに近いものを大いに感じさせます。2ndや3rdで、かなりワイルド且つアグレッシヴな凝りまくり演奏形態を得意としていることを念頭に聞いていると、彼らにしては1stアルバムの序盤は割とストレートなアプローチの演奏形態なので、少し虚を突かれてしまいました。最初は割とメロディアスなハード目のネオプログレ指向の楽曲が並んでおりまして、まるでMarillionをヘヴィにして展開を加えたような感じがいたしました。しかし、このバンドの場合、さすがいろんなものを折衷するのを得意としているだけに、次第に凝りまくったアンサンブルが顔を出し始めアルバム後半部分では、かなり目まぐるしいアンサンブルやインストワークが登場しております。
個人的には、このバンドがインストで攻めまくるスタイルに転じたときが一番魅力的だと思います。確かにテクニカルな側面だけを見ていくと、ついつい比較対象としてDream TheaterやSymphony Xなどを引き合いに出したくなりそうです。しかし、このバンドの場合、よく聴いてみるとそんなに上記のバンドに共通する点は少なめかもしれない・・・と思うのは私の観点にしか過ぎませぬが。やはり欧州で活動をしているバンドで、しかもプログレ王国のイタリア出身だけあって、なかなか侮れない楽曲やインストワークを持っているのではないでしょうか。このバンド特有の、どこか不思議な感覚というか若干感じられるサイケなフィーリングはこの時点で既に芽ばえているかのようでもあります。アルバムの中盤から後半辺りが、僕自身は素晴らしいなーと思いました。特に圧巻だったのは、最終章Enigmaにおけるロングフォームの形態をとっためくるめくるようなイタリアン直系のプログレッシヴ・メタル楽曲であります。
驚くことにこのバンドの場合、実はリードボーカリストが存在しておりません。ギターリストのFranco Giaffredaがリードボーカルも兼任していますが、正直言って彼の歌声には独特の浮遊感を伴うせいか、歌メロ的な点でいうと取っ付きにくい部類かもしれません。バンド自体は4人体制をとっており、歌無しのインストパートが活躍する部分が上でも申しあげた通り、彼らの真骨頂でしょう。現在では叶わぬ希望だと思いますが、もしこのバンドが歌無しのアプローチをとっていたなら、どうなっていたことでしょう・・・。おそらくPlanet XやOn The Virg辺りに通じるような、より突進力を極めたかのようなProg Metalサウンドを確立していたかもしれません。Underground Symphonyというと、あのRhapsodyやLabyrinthなどを輩出したイタリア出身のシンフォニックメタル・グループを多く輩出したレーベルですが、実はEvil Wingsなどを含めて少なからず重要なProg Metalバンドも輩出している点が重要ではないかと思います。
1stの時点では、まだ彼らにしては割とストレートなアプローチですが次第に、はっちゃけた方向性 + サイケデリックでグルーヴィーな要素を秘めた独特なシンフォProg Metalを確立させていくので、興味がある方は楽しんでみてください。残念ながら、このEvil Wingsの1stアルバムは現在入手がかなり困難な部類になりつつあるようです。中古屋で見かけたら、興味のあるかたは試しにチェックしてみてはいかがでしょうか・・。(購入盤Review)