FREEWILL
country: Japan
style/genre: Prog Metal, Instrumental, etc.
website: http://www1.odn.ne.jp/freewill/
similar bands/artists: Planet X, Liquid Tension Experiment, Enchant, U.K., Dream Theater, Explores Club, etc.
artist info: 日本は、京都を拠点に活動を展開している本格派ProgMetalバンド



Freewill - Frac
Independent Release
(2002)

「Prog Metal」をキーワードに、世界各国から登場している様々なバンドを中心に取り上げていますが、我が国からも本格的なProgressive Metalバンドが登場したのでご紹介したいと思います。Freewillは、京都を拠点としてコンスタントに活動をしているプログレッシヴ・メタルバンドであります。おそらく2002年にリリースされたアルバムの中で、インパクトの高い作品の一つではないかと思います。現在、日本国内で活躍している数少ないProg Metalバンドの中でも、一際ギラリと光るものを持った存在だと個人的には音源を聞いて思った次第です。 当初は、「演奏陣を充実させた産業ロックバンド結成」という目標を掲げてバン ドの母体をスタートさせていましたが、活動を続けていくうちに本格的にProgressiveなインストを探求していくバンドへと変貌を遂げていったようです。そして2002年の夏に記念すべき、fracをリリースして現在まで活発にライブから音楽活動をしています。 さて気になるfracの内容ですが、非常に水準の高いProg Metal的スタイルが貫かれたインストが楽しめます。CDは4曲で構成されていますが、組曲構成をとるなど大作志向が伺える内容で、どの楽曲も海外のProgMetal作品に比肩するほどの力作と思います。

特に冒頭のトラックは秀逸で、Zenith Of Karma(因果の頂)の構築性の高さや、目まぐるしくも劇的な演奏に度肝を抜かれます。2曲目のConversion-Creation(転換-創造)では、混沌とした世界から放出されるマグマのようなエナジーが聞く人間を異空間にいざないます。Innerspace(体内宇宙)やPagoda(仏塔) などでは、プログレメタルの範疇におさまらないオリエンタル・フレーバーや、時にはTJ Helmerich & Brett Garsedを彷彿させる爽快感を味わえるなど、インスト陣の技やアレンジメントの引き出しの多さに驚かされます。平均年齢は20歳前半ということで、国内にもこういう凄いバンドが活躍しているのかと思うと、大変嬉しくなってきます。知的で哲学的なコンセプトを織り込ませながら、そのコンセプトに沿った演出が見事に表現されていると思います。ギター・キーボードのソロも大変練られていてカッコ良いですし、屈強なリズムセクションから紡がれる変拍子や複雑なアンサンブルなども含めて既にワールドクラスの片鱗を見せています。

インディーズ/アンダーグラウンドには切磋琢磨し日夜修行に励んでいるProg Metalバンドが、国内にも少なからず存在している訳ですが、21世紀に入りFreewillというバンドに出会うことが出来たのは嬉しい限りです。国内のProgMetalシーンを牽引していく存在になっていって欲しいと思います。目から鱗が落ちる、全編エキサイティングなProg Metalサウンドが展開されていますので、Dream Theater, Explores Club, Liquid Tension Experiment, Enchant, Dreamscapeなどが気に入っているリスナーにも、ぜひ京都のFreewillに耳を傾けていただければ幸いに思います。興味を持って購入を考えている方は、ぜひFreewillにコンタクトしてみてください(↓のメールアドレスとウェブサイトをご参考にどうぞ!)。日本を代表するネオクラシカルMetalバンドのConcerto Moonを始め、国内の実力派Prog Rockバンド達とも、東京のシルバーエレファントなどで共演を果たすなど、ライブでも彼らの素晴らしい演奏が堪能できます。スケジュールなどが調整できたら、一度は拝見したいバンドの一つであります。(プロモ盤Review)

PILGRIM WORLD推薦盤


Freewill - Never Act
Independent Release
(2003)

京都を拠点として活動を展開しているProg Metalバンドによる2枚目のリリースがこのNever Actです。前作で素晴らしいキーボードワークを繰り広げていた辻が脱退後、後任ニューメンバーとして何と2名の鍵盤奏者が加入(Yagi Shunsuke、Ueda Toshio)。2人のニューメンバーを加えて総勢5人となったFreewillの音がどういう形になるのか?というのがポイントだったが、このNever Actでは前作で見られたスリリングな展開の作風に加えて、透明感を帯びたスケールの広い音楽を追及しているように思う。前作では確かにテンションの高い押しと引きを兼ね備えたハイパーProg Metal的インストが炸裂していた訳だが、今回はそういう面を追及しているというのとは異なる位置にあるのだと思う。それぞれの楽曲が求めるものに従ってバンド名通り、何者にも囚われないフリーな意思によって流れていくような・・・そういう感じがする。

まずは、冒頭のオープニング・トラックのEntrance。イントロダクションとしては、効果的な深みのあるシンセのサウンドで幕を開ける。雰囲気的には、Psychotic WaltzとArkheなどに通じるような不思議な浮遊感覚と奥行きを感じさせるハードなスペーシーサウンド。新世界への入り口に到達したかのようなイメージ。

2曲目のIzanaiでも、これまた序盤から流れ出るキーボード・シンセソロの音が魅惑的。次第に楽器陣が紡ぎだすメロディーラインやフレージングが、タペストリー状に織り込んでいくかのようだ。全体的にはダークな雰囲気を醸し出しつつもハード且つパワフルなセクションが配置されていて、キーボードソロにも巧い形でマッチングしている。やはり特筆すべきは、vmoことMasahiro Leeの知的なギターソロやラインが、ときにシャープに且つクレバーに空間を飛翔する様がとても素晴らしく、ある意味Allan HoldsworthやScott McGillにも通じるものが個人的にはしました。曲後半で登場するサンプリング加工されたかのような音や、逆回転サウンドのようなものが出てくるところも、かなり斬新である。

3曲目のFortressも、これまた前作に通じる緊迫度の高い、テクニカル且つコンプレックスなアンサンブルが炸裂。冥府の世界でクーデターが勃発したかのような、臨場感を味わえる。特にこの曲ではギター・ベース・ドラムの三位一体となった、非常にパワフル且つヘヴィーな音の塊が炸裂し、ドライビングている様が聞いていて面白い。

4曲目のThe Almighty Godでは、一転してピアノサウンドに導かれながら、しばしの安らぎや暖かみを感じることができる。音全体の印象としては、安らかに移り行く心象風景が描かれている。この曲の全編で登場する、柔和なギターサウンドとピアノ・キーボードのサウンドが上手くブレンドされている。神の御前には、安らぎと平和が与えられるのであろうか。

5曲目のMaelstormも、4曲目に引き続き比較的穏やかな形で楽曲が進んでいく。確かに全体的な流れは穏やかであるものの、スケールの大きさを感じさせる。最初は、嵐の前の静けさ的ムードだが、段々と気圧に変化が表れたかのように全体がゆっくりと動き出し、湿り気を帯びた空間美が心地よい。

6曲目のLawは、今までの楽曲とは違って一言で言い表すならば何ともしれないアカデミックな雰囲気がする。統率されたというか、一定の秩序の元に社会や世界が構成されているものの、どこかこの楽曲で描かれている世界の住人達の大半は覇気や快活さを感じられない。・・・・といったように、まるで現代社会の病巣や人間の弱さを浮き彫りにしたら、こういうサウンドになるのだろうと強く感じさせる音世界。また同時にそういう閉塞とした状況下においても、ひたむきに力の限り生きていける希望を見出そうと努力している姿も、この楽曲から感じる違う側面でもある。そういう音世界を生み出している原動力として、ピアノサウンドやストリングスなどが効果的な働きをしているのは言うまでもない。

7曲目のKaffでは、ロボティックなシンセサウンドで幕を開ける。4曲目〜6曲目とはまた雰囲気が異なり。1曲の中で、様々な変化が繰り広げられている。なんとこの曲は15分にも及ぶ大作となっており、展開するパートも練り上げられており非常にスリリング。変拍子やテンポチェンジ、リズムのバリエーションもとても効果的に構成されている。全編に渡って登場するProgressive且つパワフルなアンサンブルが、緩急見事に織り交ぜられており、非常にドラマティックな出来上がりになっている。この曲の中間部から後半部で出てくるキーボードパートやギタープレーが活躍し前面に出てくるところは、時にはDream TheaterのTrail of TearsやU.K.の1stにも通じると言うのは過言だろうか?。

ラスト8曲目のCaveは、題名通り、まるで洞窟や鍾乳洞にいるかのような印象を与えてくれる。水滴が長い年月を経て岩を穿ち、さまざまな模様を作り出しているかのような感じ。ゆったりとした時間の流れを感じさせる一方、ゆっくりと大きく何かが動いていくようなスケール感。この曲では、かなりドラムビートやベースなどのリズム隊がよい働きをしていると思う。曲を聴き進めていくと、なにやら人の声などが聞こえてくる。ある意味、それは人ではなくて、異性人との会話やコミュニケーションをとっているようにも捉える事ができる。途中で曲が消え入る感じで、終焉を迎えるか?と思うのと同時に柔らかいエレピのサウンドやシンセの音が空間一杯に広がり、そしてベースとドラムビートが覆い被さっていく様は、近年のKing CrimsonやGordian Knotにも通じる深みを感じました。いろんなサウンドが登場して、ダーク且つエセリアルな効果を生み出していている。この辺りの部分はある意味、華やかさを感じさせたりもするのが不思議である。忘れてはならないのは、この楽曲後半パートで出てくるNakao Hisashiによるベースラインとフレージングがなんとも魅力的である。

全体的にNever Actを聞いていて思ったのは、前作のハイテンションなProg Metalインスト作風とは趣きが大変異なっており、構成が緻密でありながらも、知的な空間美とスケールの壮大さがまずリスナーの心を鷲掴みにしてしまうことが、大きな印象として残りました。割とダークなのだが、不思議な透明感と繊細且つ大胆な彩りが作品全体に渡って描かれており、一言でいうなら現代的な印象派Prog Metalサウンドと捉えることができるのではなかろうか。Prog Metalを根幹に持った、独特のインストゥルメンタルの境地にFreewillは到達していると僕は思う。これからも彼らは魅力的な作品を作りつづけて行くであろう。新世代の感覚を鋭く持ったProg Metal/Rock集団だ。(プロモ盤Review)

PILGRIM WORLD推薦盤

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