THE FRACTURED DIMENSION
country: United States
style/genre: Technical Metal, Progressive Metal, New Tendencies, etc.
website: http://www.thefractureddimension.com/
related bands/artists: Power of Omens, Scholomance, etc.
similar bands/artists: Spastic Ink, Power of Omens, Frank Zappa, Terry Bozzio, etc.
artist info: テクニカル指向のアンサンブルを得意とするアメリカの奇抜なProgressive Metalグループ。



The Fractured Dimension - Towards The Mysterium

Independent Release
(2008)

このThe Fractured Dimensionは、元Power of Omensに在籍した技巧派ドラマーのAlex Arellanoを擁するインストTechnical Metal/Progressive Metalグループです。まずアルバム全体を聞いての印象ですが、Spastic Ink辺りに通じる奇抜なリズム展開が中心の前衛寄りなコンプレックスな音楽を得意としている集団です。久しぶりに変態指向の凝りまくりなテクニカルメタル系バンドが登場したなーというのが正直な感想です。他にもアヴァンギャルドなDeath MetalグループのScholomanceで活動をしているJimmy Pitts (keyboards)とJerry Twyford(bass)で主なメンバーが構成されています。当然この3人をフューチャーした難解なリズムパターンの組み合わせや怒涛の連発ソロが繰り出されています。特に変態な要素を含むテクニカル指向のメタルファンには楽しめるのではないでしょうか。

主に作曲はJimmy Pittsが手がけていますが、今回の作品は音楽の歴史の中でも異彩を放っている作曲家Alexander Scriabinの生き方や音楽からインスパイアされたものになっているそうです。Jimmy Pittsがバリバリと弾きまくるキーボードやピアノの演奏に圧倒されました。クラシカル出身のプレーヤーのように見受けることができました。アカデミックなスキルをつけた人なのか前衛的なピアノ奏法も得意としており、RavelSchoenberg辺りを好んでいるそうです。それから圧巻というか凄まじいのは、Alex Arellanoのドラミングであります。Power of Omens時代と変わらない、あの超忙しい変拍子リズムパターンでグイグイと引っ張っているところがスカっとします。リスナーによっては叩きすぎて変態気味なのが不得意な人には辛いかもしれませんが、Terry BozzioMarco Minneman辺りのプレーヤーが好きな人には注目して欲しい恐るべきレベルに達しているドラマーであります。Jerry Twyfordの場合は、上記の2人と比べると地味かな?と思いそうになりましたが、これだけの忙しいリズム展開の中でも見失わないだけでなく、しっかりと支えることができる力量の持ち主です。

バンドのメンバーの中にはギターリストがクレジットされていませんが、この辺りは参戦しているギターリスト達に自由に弾かせているスタンスをとっています。今回の1stアルバムには、様々な方面から技巧的プレーヤーがゲスト参加しております。割と有名どころとしては、WatchtowerRon Jarzombekもスポット参戦していますが、残念ながら参加しているパートはほんの僅かであります。Sun CagedからはMarcel Coenenが流麗且つトリッキーなギターソロを弾いています。RonやMarcelと比べると、参加している残りのゲスト・ギターリスト達は殆ど無名な人たちばかりですが、どのギターリストもテクニカルに切り込むのが大好きな人達を揃えております。発見した名前として「オオ!」と嬉しくなったのは、インストProgressive Metal系のバンドSuper String Theoryで活動しているAaron Rotenも強豪ギターリストが、ひしめき合う中でギターソロを弾いて健在ぶりを見せていることでしょう。他のインストナンバーを見渡してみるとヴァイオリンプレーヤーが参加しているものもありますが、珍しい楽器としてはテナー・サックスやトランペット、タブラが登場しております。色んな意味で様々な要素をブレンドしたプログレッシヴなサウンドを形成しているように思いました。ViolinやKeyboard類が活躍するパート辺りは、どこかチェンバーロックというか、人によってはSleepytime Gorilla MuseumUnivers Zeroに通じるものを感じるかもしれません。

怒涛のリズムパターンで繰り出しながら、押し出していく一方かと思うと、そうではありません。濃密で一辺倒という訳でもなく、この手の変態サウンドにしては静謐な側面もちゃんと用意されています。聴きやすいと言うと語弊があるかもしれませんが、個人的には1回目から楽しめました。奇抜でアヴァンギャルドな側面もありますが、これだけテクニカルに攻めつつも何度聴いても耳に疲れが残らないというのも不思議な体験ですね。プロダクション面を見ていくと、自主制作な作品だなーという印象はどうしても残ってしまいますね。個人的には、最初は音的に奥行きや厚みのような部分がもっと少し欲しいような気もしましたが、聴いているうちに段々と気にならなくなりました。テクニカル寄りなミュージシャンシップを楽しめるリスナーにとっては、聴く上では何の障害にもならないように思います。ジャンル的にはProgressive MetalやTechnical Metalに属するタイプですが、Spastic InkWatchtower辺りのスタイルが苦手な人には、非常にとっつきにくいということは覚悟をしておいてください。ですが、変態チックなものや前衛寄りなアプローチが施された奇抜なProgressive Metalを聴きたいという人には、かなり面白いことをやっているように思います。興味のあるリスナーは、MySpaceやサイトで音源をチェックして下さい。http://www.myspace.com/thefractureddimension (プロモ盤Review)

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