HELLBORG, JONAS (ART METAL)
country: Sweden
style/genre: Technical Rock, Hard Fusion, Jazz/Rock, Prog, World/Ethnic, New Tendencies, etc.
website: http://hellborggroup.com/
related bands/artists: Jonas Hellborg, Mahavishnu Orchestra, Zoltan Csorsz, Mattias IA Eklundh, Shawn Lane, etc.
similar bands/artists: Michael Manring, Jaco Pastorius, Shawn Lane, Jens Johansson, At War With Self, etc.
artist info: 様々なソロワークスやプロジェクトなどを中心に、独自のサウンドとスタイルを追求している凄腕ベーシスト。



Hellborg/Johansson/Selvaganesh/IA Eklundh/Johansson - Art Metal
Bardo Records
(2007)

Shawn LaneJohansson兄弟等との活動で、高い評価を受けているスウェーデンのベーシストJonas Hellborg。そのJonasが主宰しているArt Metalプロジェクトが、遂にそのベールを脱ぐ時がやってまいりました。2006年度のHeadway Festivalで彼等は、ヘッドライナーで登場しました。その当時は、トリオ形式のArt Metal Trioということで、非常に白熱した攻撃的なハードフュージョン風のテクニカルサウンドを披露していたことが、記憶に新しいところであります。しかし、このアルバムのリリースが近くなってみると、トリオ形式の体制に変化が現れることになります。蓋を開けてみるとArt Metal Trioの時に叩いていたドラマーで、元The Flower KingsメンバーだったZoltan Csorszの姿は既に無く「オヤ?」と思いました・・・というか激しくショックだったのは、ここだけの話です。ラインナップ的には、リーダーのHellborgとギターのMattias IA Eklundh (Freak Kitchen)は不動。最終的には、ドラマーにAnders Johanssonが迎えられ、Kanjeeraといったインドのパーカッションを担当するSelvaganesh (Remember Shakti)、そしてキーボードにJens Johanssonが参加するラインナップとなっています。

この作品を聴く前、「Hellborg/Lane/Sipeのようなタイプのテクニカル・フュージョンに近いことをしているのか?」と思っておりましたが、そういった要素は濃くない・・・というかアプローチは違うように思いました。Art Metal Trioで培ったハードなテンションを大事にしながら、独特の雰囲気を含むHellborg色の入ったメタリック風味のハード・フュージョンをやっているというのが、個人的に到達した結論であります。Selvaganeshが参加しているので、確かにJohn McLaughlinPromiseに収録されていたインド・フュージョン風に通じるサウンドも確かに出てきますが、もろエスニック狙ってみました・・みたいな方向性が強いかというと、そうでもないので安心してください。個人的には、もっとインド色が濃いサイケデリックの超難解なものが1曲でもあると面白かったかもしれませんが、Kanjeeraの音が超・気持ちいい場面が登場するので期待してください。こうしてみていくと、テクニカル・インスト系、Hard Rock/Metal, World/Ethnic, Jazz/Fusionの要素を高次元で融合させることに成功していますね。何かの要素に偏ったわけではないトータルバランスが保たれたクールでありながらもテンションのあるインスト音楽になっています。

この作品にZoltan Csorszが何らかの理由で参加していないのが、非常に惜しいというか残念だなーと思います。作品自体の大半は、おそらく今のラインナップを意識して解体し組み立て直したインスト、または全くの新曲ばかりのせいか何かJonas Hellborgの別のプロジェクトみたいな感じがあって、正直初めてこの作品に接したときは戸惑いました。ツアーで周っていた時のArt Metal Trioを偲ばせる、もしくは原型らしきものを感じるのは4曲目のSolitude, 5曲目のThe Three Princes of Serendipと8曲目のArt Metalで、これらは本当に彼等の実力が遺憾なく発揮されていて大変素晴らしく・圧倒されるかのようなパフォーマンスです。何回か廻してみて、ようやくArt Metalの全体の音楽に馴れてくるようになりました。細かく観察してみると、さりげなく凄いことをビシバシっとやっているのであなどれません。攻めるときは攻め、引くときは引く・・・やはり、この集団のミュージシャンシップは恐るべき領域にあると解釈すべきでしょう。

Mattias IA Eklundhのプレーの割合は、当然大変高いのでFreak Kitchenや彼のソロが好きな人は、その変幻自在のメタリックなギター奏法は健在なので、その辺りから攻略すると面白いと思います。Johansson兄弟が参加しているので、そちら方面で興味を持ってくる人も出ると思いますが、どちらかというとゲスト的な立ち位置という感じなのでリスナーによっては感想は微妙かも?・・。ちなみにJens Johanssonのソロ・スポットや摩訶不思議なリードプレーなどが、中盤以降にちゃんとフューチャーされています。ドラムやパーカッションのセクションに関しては、SelvaganeshとAnders Johanssonの2人が本来のZoltanのパートを受け持ちつつ、アイデアを発展させたような感じもします。Jonas Hellborgは、全編に渡ってトータルバランスを考えてのプレーで、雰囲気を重視してます。非常にクレバー且つ知的なプレーに終始しつつも、盛り上がってテンションが上がってくるとフュージョンやファンク的な要素の強いテクニカルなソロでビシビシっと心地よく決めてきますね。

Art Metalといいながら、全編がフルスロットルで畳み込む・音圧で圧倒すると必ずしも言えないかもしれません。意外にも序盤の3曲なんて、さらっと聴いていると案外あっさりしていると感じちゃうから不思議です。濃密度から言うと、むしろJens JohanssonFissionや上で名前を挙げたHellborg/Lane/Sipeと比べると、やや大人しめだったりします。奇天烈で痛快且つ超絶技巧ばかりを求めると、多分この作品の焦点がボケてくるでしょう。・・・もちろん、これだけの凄い面子が集まっているので、テクニカルなソロやパフォーマンス・インストセクションは当然登場するので、その点では安心して欲しいです。実は曲によってはメタル的度合いは、皆無に近いものもあるのでメタル路線を期待しすぎると、もう迷宮入りしてしまうリスナーもいるかもしれません。

ストレートに迫ってくるものもあれば、変化球を加えてくるものもあるので、作品的にはインスト指向のリスナーには確実に楽しめるアルバムだと思います。最後に収録されているハイライトのインスト曲Art Metalのように、もっともっと熱くなっても良かったかもしれませんが、この作品は面白いので焦らずに楽しんでいくスタンスで行きましょう。当然Prog MetalやProg Rockが好きなインスト指向のファン層にも楽しめるポイントはたくさんありますので、サイトなどで音源をチェックしてみては如何でしょう。(購入盤Review)

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