Lion's Share - s/tCentury Media/Zero Corporation
(1995)
北欧はスウェーデン出身のベテランHard Rockグループ: Lion's Shareの記念すべきファースト・デビューアルバムです。Lion's Shareは1993年に結成後、メンバーチェンジを繰り返しながらも現在も活動を続けています。彼等は終始一貫してメロディアスでキャッチーな分かりやすさを前面にしたHard Rock/Heavy Metalを得意としている集団ですが、特にこの1stアルバムはProg MetalからNeo-Prog的な要素も含まれているので、とっても楽しめる作品と言えます。楽曲自体はとてもコンパクトで引き締まったものになっていますが、ギターソロとキーボードソロがふんだんに登場しつつ、絡み合う楽曲もところどころに配されていて、その辺りが魅力と言ってもよいでしょう。
彼等の場合は、後期になればなるほど音楽性もシンプルでストレートなものを押し出していきますが、1stアルバムはアップテンポな楽曲からProg Rock系から影響を受けた緻密でイントリケイトな手法を入れたものが収められているので、僕自身は彼等のキャリアの中では1stアルバムが断然お薦めです。Andy Engbergによる歌声とパフォーマンスが凄まじく、鳥肌が立つほどの表現力とド迫力の声の持ち主です（後に彼はSection Aで大きく貢献することになります）。このアルバムではKeyboarditのKay Backlundも大きく活躍しており、サウンド的には80年代以降のデジタル風の音を出すのを得意としていますが、シンセソロが活躍するところはプログレ的なものがお好きなんだという印象です。このグループの中心人物であるLars Chrisもバッキングのみながらず、ギターソロやリードでも貢献しています。Larsに関してはとりわけテクニカル指向のギターリストとは言われていないかもしれませんが、キャッチーで万人に分かりやすい音楽作りが巧い人だというのが伝わってきます。
このアルバムを出した時期が彼らにとっての蜜月期だったのか、アルバムに収録されている楽曲はどれも珠玉のナンバーでHard Rock/Metal系のリスナーならば、確実に最後まで嵌まれると思います。ところどころにポンプ色やProg Metal的な要素もあって均整感覚に優れた内容を見事作り上げることに成功しています。ただ純粋なるProg Metal作品あるいはNeo-Prog路線を期待しすぎると、楽しみが半減するかもしれませんので、その辺りはリスナー次第でしょう。僕自身はかなり嵌まることが出来ました。ハイライトナンバーも数多くあります。彼らの場合は、割とBlack SabbathやDeep Purpleからの影響も大きいようで、そういった影響を自分達の中で消化してキャッチーな北欧ハードロックサウンドに仕上げているところがいいですね。Keyboardが前面に押し出されている楽曲はAsiaやEuropeを彷彿させる一方で、3やEmerson, Lake & Powell時代にも通じるアレンジを見受けることができました。
個人的にはアルバム前半は特に素晴らしく、後半もメロディアスでキャッチーなナンバーが勢揃いしていて北欧ハードロック名盤にも選出してもらいたいぐらいです。彼らの場合はテクニカルなProg Metalを主体にしたプレーをするというアプローチとは異なりますのでご注意を。その一方で、Prog Metal的要素を含む親しみやすいハードロックサウンドが聴きたいという方にはお薦めしたいと思います。聴きなおして思いましたが、とてもいい作品だなと自分は思いました。(購入盤Review)
PILGRIM WORLD推薦盤