MACALUSO, JOHN (John Macaluso & Union Radio)
country: United States
style/genre: Prog Metal, Technical Instrumental, HR/HM, New Tendencies, etc.
website: http://www.johnmacaluso.com/
related bands/artists: MCM, Ark, Yngwie Malmsteen, Vitalij Kuprij, Dimuti, Ze Gray, Marco Sfogli, Alex Masi, James LaBrie, etc.
similar bands/artists: Ark, MCM, James Murphy, James LaBrie's Mullmuzzler, Mike Terrana, Alex Masi, etc.
artist info: TNTやArk, Yngwie Malmsteenなどとの活動で知られている敏腕ドラマーによるソロ・プロジェクト。



John Macaluso & Union Radio - The Radio Waves Goodbye
Lion Music
(2007)

ニューヨークを拠点に活動をしているロック系ドラマーのJohn Macalusoによるソロプロジェクト第一弾が、このUnion Radioということになります。これまでに200枚以上のアルバムでドラムを叩いたということも驚きですが、それにしても参加している面子が、かなり充実していて素晴らしいことになっています。Prog Metalスタイルからハード・フュージョン風、そしてストレートなRockナンバーやElectronic系に影響をされたモダンなものまで含めて、色々と刺激のある内容になっていると自分は感じました。楽曲の元となる素材はJohn Macalusoが用意しておりますが、このThe Radio Waves Goodbyeには、欧米出身のミュージシャンを中心にしっかりとコラボレートされており、またプロダクション的にも納得がいくように作品を仕上げるのに1年半ほどかかったそうであります。

まずThe Radio Waves Goodbyeの場合、ドラマーのソロ作品としては珍しい部類と言えるでしょう。Mike Terranaのソロアルバムに近い感じで、割と楽曲指向のものとインストものに分けています。John Macaluso & Union Radioの場合、むしろ楽曲指向のものが強く、テクニカル系の人達が集まっているにも関わらず、Prog Metal〜Hard Fusion的なインスト路線で、これみよがしにグワーっとテクニカルなせめぎ合いをするのは、T-34などと数えるぐらい僅かなナンバーのみといった感じです。当然、曲の中でバシバシっとテクニカル且つコンプレックスなソロやパッセージと怒涛のリズムパートは出ておりますが、面子からして抑えぎみと捉えることもできます。しかし、それだけ抑えても楽曲自体に魅力があるので、派手なソロよりも中身の充実度を図ったと考えることもできるでしょう。参加しているメンバーが有名・無名を含めてあまりにも多いので、こちらのサイト向けに興味深い人達を中心に挙げながら主だった楽曲を見ていきましょう。参加している皆さん、かなりいい味だして頑張っています。

まず1曲目Soul In Your Mindのナンバーでは、いきなりDream TheaterからJames LaBrieが参加しております。この曲は、のっけから臨場感たっぷりのProg Metal然としたカッコいいナンバーとなっており、まるでMullmuzzlerSix Degress of Inner Turbulence期のDream TheaterArkがドッキングしたようなと表現したくなるほどです。このアルバムで貫かれている信条として、典型的なギターリフが主体のものとは、距離を置いたものにしているという拘りを持って作っているそうなので、何かアレ?と感じるかもしれませんが、この辺りが絶妙な味わいを醸し出しているかもしれません。中盤でJohnによる怒涛のドラムパートと、Vitalij Kuprijの短めのシンセリードが良いアクセントになっています。こういうProg Metal風な楽曲ナンバーで、Vitalijのソロが決まるというスタイルは、新鮮だったりしますね。何ていうかMats Olausson的アプローチでサポートする時のVitalijは、嵌っていると思ったりしました。Alex Raptopskinなるロシア人によるギターソロも弾き過ぎないように抑え気味ですが、ポイントを押さえた形でいい具合になっています。いやーこの曲は、メチャメチャかっこいいですよ。一発で気に入りました。

2曲目のMother Illusionは、結構変わった手法だと思います。前述したように典型的なギターリフやバッキングとはアプローチが全然違っています。むしろシンセサイザーや打ち込み風なキーボード音がバックで、しっかりとバックボーンを構築して支えているといます。これはどうやらコルシカ島出身のKeyboardistでありマルチミュージシャンのDimutiという人物の貢献度が高く、非常にコンテンポラリーな手法を得意としています。このビートの効いたKeyboard音の作り方や刻み方は、Dali's Dilemma/MullmuzzlerでのMatt Guilloryに近いかもしれません。「Mother Illusion」という曲だけでなく、このアルバムの全編でJohn Macalusoのブレーン的な形でシンセ音を中心に大活躍しています。なるほど、よく聞くとこの曲はギターの音は、皆無です。表現の仕方は変かもしれませんが、Bass & Drumsやシンセティックなビートが効いたダンサンブルなサウンドを有機的に人間味を加えて、ハードな仕上がりにした新感覚のProg Metalという感触を持ちました。この曲では、HR/HMシーンではよく知られているRiotMasterplanで活躍をしているMike Dimeoがリードボーカルをとっておりテンションの高いパートでは、Arkに通じるかっこよさです。多分、ギターサウンドを期待する人には、この楽曲でトーンがガックリと落ちる人もいるかもしれませんが、そういうところが気にならなければ全く大丈夫というか、この楽曲はかなり刺激度が高くダンサンブルでビートが効いたロックサウンドが好きなら問題なく楽しめるでしょう。

3曲目のThe Prayer Pillは、これまでとテンポやトーンも変わってきます。この曲では、Arkの新しいシンガーの候補として残ったAdrian Holtzなる人物がリードボーカルをとっています。ヴァースのところなど、雰囲気は気だるく若干ドヨーンとした浮遊系のサウンドなので、この楽曲は好き嫌いは分かれそうですね。ですが、コーラスやサビ辺りは面白いというか、歌を中心にHR/HM系のかっこよさを持っています。The Prayer Pillは、ギターの使い方自体は既にハードロック的な部分からは随分離れている感じがします。ギターソロやインタールード辺りのところは、少しばかり80年代以降のKing CrimsonぽいというかAdrian Belewみたいなテイストです。歌のタイトルや歌詞のラインからもインスパイアされているかのように、かなり退廃的な匂いも感じます。たぶんこの辺りは、メロディアスHR/HM系の音楽を好む人は苦手に感じるのではないでしょうか。

4曲目のDissolvedは、再び自分の好きなタイプのナンバーです。なにやら民族風なドラムサウンドとエレクトリック且つアンビエントな音響効果を加えたようなJohnのドラミングで入り、3曲目の雰囲気を受け継ぐような浮遊感がありますが、もっと躍動的です。この曲もAdrian Holtzがリードボーカルで参加していますが、歌メロと抑揚のつけかたは流石Hard Rockシンガーと呼ぶにふさわしい。なるほどArkの新しいシンガーとして有力候補に挙がったのは確かだなーと感じる人は多いと思います。3曲目よりは、とっつきやすいのは1曲の中に色んなリズムやパッセージやムードが盛り込まれているせいでしょう。ベースとギターを担当するLarry Meyerなる人物のソロは、Pink FloydDavid Gilmore辺りから影響を受けたような英国的なフレーズを奏でる人です。この曲も好き嫌いが分かれるかもしれませんが、浮遊感とドンヨリとした雰囲気の中にもリズムやビートは効いていて、面白いと思いました。

5曲目のGates To Bridgeは、久しぶりにハードなギター然としたサウンドも戻ってきているので、Prog Metal派のリスナーも楽しめると思います。なるほど、それもそのはずでギターにはSavatageJon Oliva's Painでお馴染みのChris Caffreyが参加しています。これも浮遊系のサウンドやポストロック風な感じで全編行くのか?と思いましたが、少しずつヘヴィー度のある音が挿入されて安心できるでしょう。嬉しいことにメランコリックなパッセージを挟みながら、段々と重厚になってきて、ハード且つテンポも上がってきます。この曲も中盤から後半辺りはArk的な色彩が含まれているかな?と自分は思いました。ボーカルは再びMike Dimeoが担当していますが、彼もひょっとしたらArkの次候補に挙がっていたのかもしれません。2曲目と同じく素晴らしい働きをしていると思いました。

6曲目のShimmering Grayでは、遂にイタリア出身の実力派ギターリストMarco Sfogliが登場しておりますので、ギターファンにとっては大変嬉しいのではないでしょうか。リードボーカルは再びAdrian Holtzにチェンジしています。この曲でまたテンポが、先ほどの曲と比べるとゆったりとしたペースになります。バッキングでは色んな音が鳴っていますが、空間をたっぷりと取りつつ歌を主体にした内容になっています。ボーカルのサビやコーラス部分は、やはりドッシリとして耳をひく歌メロがありますね。

6曲目が終わるやいなや、間髪入れずに7曲目のT-34が始まります。後半に入ってようやくオールインストです。Planet X風なアップテンポなハードフュージョン系という印象がありましたが、よく聴いてみると色々な表情を見せております。畳み掛けるかと思いきや、チェロやピアノ・キーボードが入るところは非常に劇的でクラシカル音楽や映画音楽に通じる壮大な要素も持っています。キーボードとピアノは、Vitalij Kuprijが担当しています。Artensionに通じるようでアプローチは少し異なっており、新鮮ですね。Neo-Classical系で活躍しているVitalijですが、バックがHard Fusion的なサウンドの中でそれに合わせるソロのとり方というか、そういう手法の方が僕は好きですね。それにしても、この曲でのMarco Sfogliのギターワークスはアコースティックが主体ですが、エレクトリックのソロで弾けるところは非常に魅力的であります。

8曲目のStaring "Pain"は、前の曲を受け継ぐ躍動感のあるハードなProg Metal風ナンバーで、これまた好みのタイプですね。リードボーカルは6曲目同様でAdrian Holtzが担当。嬉しいことに、またまたテイスティー且つダイナミックなMarco Sfogliのギター演奏が、たっぷり楽しめます。全体的にドッシリと重厚感たっぷりで、割とストレートにガツーンと響いてくるでしょう。

9曲目のPretzelのみが、John Macalusoによる鬼気迫る怒涛のドラム・ソロのみがフューチャーされたものになっています。この曲は・・というか(ドラム・ソロは)、ある意味ロックコンサートにおける「ドラムのソロ」というのは、トイレ休憩タイムという捉え方をされているのを自虐的なギャグというかジョークにしているSEが最初に挿入されています。女の子と男性が会話をしているところが出てきますが、「ボーカリストやギターリストは最高だったけど、ドラマーはソロの時にトイレに行ってたから、(ドラマーが)ステージで何をしていたのかよく分かんなかった」みたいなノリです。うーん確かにHR/HM系のドラムソロが苦手な人は、これはピンと来ないかもしれませんね。

10曲目のYesterday I'll Understandは、またこれまでとはまた雰囲気が異なっております。前半にも収録されていた浮遊感のある楽曲に通じますが、もっとストレートな現代感覚のHR/HMナンバーと言える仕上がりです。リードボーカルは、Don Chaffinなる人物が担当しています。ギターは割りと多く使われており、リードギターは東海岸方面のメタルグループなどの活動で知られているJack Frostが弾いておりますね。ベースと他のリズムギターなどをLarry Meyerが弾いています。

11曲目のThe Six Feet Under Happy Manというナンバーで、ロックとはかけ離れたコミカルな感じです。場末のバーで流れているようなビッグバンド的な雰囲気が漂っています。ウォーキング・ベースの動きが妙に渋いなーと思ったら、ArkMCMで共演しているRandy Covenだったりします。橋休め的な曲でありますが、こういうジャジーなポピュラーサウンドもお遊び的にやるというのは、流石ニューヨーク出身の人達の集まりだなーと思わせるものがあります。

12曲目のThings You Should Not Knowは、再び本来のProg Metal風な路線に戻ってのナンバーとなっています。リードボーカルは、再びAdrian Holtzが担当しています。この曲は序盤は、ドヨーンとした感じになるのかな?と思いきやアップテンポに展開して再び躍動感を伴ったもので、ノリやすいと思います。久しぶりにJohn Macalusoのドラムビートが主体でいいグルーブを刻みつつ楽曲が展開されていると思います。このリードギターの切れ味のよさとパッセージの繰り出し方カッコイイなーと思ったら、なんとあのAlex Masiでした。女性によるバッキングコーラスが、どこか妙な浮遊感も醸し出していて、これまた違ったムードを作り上げていることに成功しています。

ラストナンバーは、Away With Wordsというインストで締めくくりになります。最後に収録曲ということで、インストによる攻防一体のパートがあるわけでもないです。うーん、この曲はなんて表現すればよいのでしょうか。70年代的なユーロ・ロックや英国のProg Rockのようなサウンドを懐かしむとでもいうか、哀愁や悲しさもある不思議なあくまでもモダンなサウンドです。ここでも再びロシア人ギターリストのAlex Raptopskinが派手ではないですが、頑張っています。割と全体的には大人しくも印象的なメロディーが目立つといった具合です。歌という歌はなく、SE風なボーカルが途中で挟まれますが、これらはプロセッシングされたDimutiJohn Macalusoの声です。

ということで、これを読んでいただいてJohn MacalusoによるUnion Radioなるプロジェクトのサウンドが大体掴めて「面白そうかな?、やっぱり聴いてみようかな?」というところ感じになれば、ありがたいなーと思います。いつのまにかトラック by トラック方式のレヴューになりましたが、このアルバムは全体的にサウンド・プロダクションは大変良好です。また音楽的なトータルバランスが素晴らしく、バラエティに富んだ内容になっていると自分は心底思いました。確かに2曲目から4曲目辺りなどの楽曲が顕著ですが、典型的なギターリフや重厚なギターサウンドの壁を構築するアプローチとは反対なので、HR/HM系を中心に聞いている人には、この辺りで面白くないアルバムと断定されるのは勿体無いと感じました。Prog Metalリスナーですら、その辺りで違和感を感じる人や地味だなーと思っているかもしれません。しかし、このアルバムは実は全体的に聴いてみると、躍動感のあるパートもたくさんありますので、この辺りを中心に攻略して、浮遊感のあるサウンドも次第に楽しんでみてはいかがでしょう?。

Johnが、自分のサイトやインタヴューで答えているように「ギターによるヘヴィー性」になるべく頼らない、むしろ「Keyboardサウンドを取り入れたヘヴィー性」に挑戦しており、その辺りが嵌ればググーっとこの作品が親しみやすくなると思います。2007年にリリースされたアルバムの中では、国内では余り話題になっていないのが残念ですが、海外のインストファンやProg Metalファンを中心に実はこのアルバムは凄いのかもしれない・・・と評価が上昇しています。勿論、僕もこの作品は結論から言いますと、素晴らしい仕上がりになっていると思いますよ。注目すべき新旧の素晴らしいミュージシャンが大活躍していますので、まずはインストファンを中心に人気が出るんじゃないかと期待しちゃいます。(プロモ盤Review)

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