MARILLION
country: U.K.
style/genre: Neo-Prog, Symphonic Rock, Prog Rock, British Rock, etc.
website: http://www.marillion.com/
similar bands/artists: Pendragon, Knight Area, Arena, Genesis, Iluvator, etc.
Artist Info: 英国を代表するネオプログレッシヴ・ロックバンド。



Marillion - Brave
EMI
(1994)

80年代にシーンに登場以来、非常に長い期間活動を続けている重鎮Neo-Prog系バンドであります。80年代は、英国のIQ, Pallas, Twelfth Night, Pendragon等と並んで主にシンフォニック・ロックやネオプログレ〜ポンプロック系統のファン層にアピールする音楽性を武器にしていました。カリスマ性の高いシンガーとしてMarillionを牽引していたFishが脱退する辺りから、Marillionは本格的にNeo-Prog RockやSymphoic Rockの範疇では括る事のできないオリジナリティと音楽性を開拓していくことになっていきます。今回、ここでレヴューをするBraveはFishの後任者として参加したリードシンガー・キーボーディストのSteve Hogarth抜きでは、決して生まれ出ることのなかった傑作中の傑作だというのが私の中での位置付けです。

本編に入る前に、とりあえず脱線します(笑)。自分の中では暫くの間、Marillionというバンドは非常に微妙な場所に存在している音楽集団でした。とりあえず、最初はベスト盤をゲットして聴いてはいたものの、自分の中では惚れこむまでには中々至りませんでした。ただ、それと同時に、このバンドの場合、何か説明しきれない「凄みと深み」をかすかに感じ取ることができました。何か決定打となる音楽があるに違いないと信じており、その決定打となるべきものを探しつづけました。そのかいがあってか、「遂に」というか、幸運にもこのBraveで彼らの音楽の素晴らしさを掘り当てることができた・・・という経緯があります。

さて、このBraveについてなのですが、実際にイングランドで起こった衝撃的な事件を元に、コンセプトアルバムに発展していくことになります。イングランドとウェールズを結ぶThe Severn橋近くにあるM4辺りを彷徨っていた女性(新聞記事によると、未成年の女性)が発見されることになりますが、警察の質問に全く答えることも反応もしない状態にあったと言う(あるいは、答えることの出来ない事情が彼女の中にはあったのでありましょう)。その記事を読んだSteve Hogarthは、その出来事に大きくインスパイアを受け、ストーリーラインを組み立てていったそうです。そして、バンドが総力を結集した結果、90年代のProg Rockシーンに残る、とてもアーティスティックなコンセプト作品として仕上がっていると思います。全体的な作品のトーンは、扱っているテーマが非常に沈鬱なため、陽気なものでは決してありません。ストーリーラインと情景を思い浮かべながら、音楽に身を浸らせて聴くならば、その効果は絶大です。これまでの彼らの作品の中でも、ベストの部類に入ると言っても過言では無いと思いますよ。

序盤のBridgeでは、ストーリーの舞台となる「橋」付近の情景や、警察と保護された女性などのやりとりなどを思い浮かべるのに大きな効果をもったアトモスフェリックな楽曲になっています。真実を語りたくても、語ることができない主人公の女性を代弁するかのように、切々とストーリーを紐解いていくSteve Hogarthの悲しい歌声が心に次第に迫ってくるかのようです。そして、彼女の中ではいろんな心象風景や過去の出来事がフラッシュバックしていくことになります。Living With The Big Lieでは、彼女の悲劇的な生い立ちや、フラストレーションや怒りなどが表現されております。後半辺りでのSteve Rotheryのエモーショナルなギタープレーが秀逸です。また、Mark Kellyによる巧みなシンセリードをフューチャーしたキーボードも楽しむポイントの一つですし、バンドによって生み出されている演奏のうねりが、非常にスリリングです。Runawayは、タイトルに集約されているように、悲惨な家庭環境、愛のない両親、救いようの無い状況からの逃避行を強く望んでいる様子が描かれています。Goodbye To All Thatで、再びBridgeのボーカルラインやメロディラインが登場することにより、事件の起こったシーンに舞い戻ります。Wave, Mad, The Opium Den, Slideといった辺りの部分では、彼女がドラッグに溺れていった様子がサイケデリック且つ、濃密な音で描かれております。Hard As Loveでは、これまでの両親やボーイフレンドたちとの苦い愛憎の経験が、若干硬質な音質を伴いながら演出されています。Hollow Manでは、複雑な人間関係により虚しさに打ちひしがれた様子をうかがうことができます。Alone Again In The Lap of Laxuaryでは、Living With The Big LieやHard As Loveに通じる躍動感と、非常にダイナミックな演奏が楽しめる楽曲になっています。アルバムの中でも秀逸な出来栄えになっていて、Ian Mosleyのドラミングやシンバルワークも大変カッコよくて、フェイバリットな楽曲の一つです。しかし、歌詞の内容はこれまでと同様に悲しみ色のトーンが支配的であります。父親から受けた性的な虐待や、理解を示さない無知な母親などの様子が展開されております。あまりにも悲惨な状況が続き、疲弊しきった彼女の心境は、あきらめの極致に至ることになります(「Now Wash Your Hand」より)。Paper Liesでは、メディアの中でしばしば見られるウソの世界やニセの情報を垂れ流すといった内容が歌われております。この曲は、イントロで出てくるサンプリングされた「印刷機械の音」が、バンドの演奏と序盤にクロスオーヴァーする辺り、興味深い効果を出していると感じました。タイトルトラックのBraveでは、ケルト風なサウンドが支配するアトモスフェリックな楽曲で、どこかこれまでの苦悶の感情から何か解き放たれたかのような印象を受けました。後半のThe Great Escapeでは、自分自身の苦しみを解決するためには、自殺をするしかないという、あまりにも悲惨で絶望的な手段に出ようとする様子が描かれています。特にこの楽曲の中間で登場する、彼女を虐待した父親への心からの慟哭には、締めつけられるほどの悲しみが伴っています。果たして、彼女の結末はどうなっていくのだろうか?・・・それについての明快な解答はここでは曖昧にしている感があります。あまりにも悲惨な運命を負わせられた主人公を慰めるかのように、最後に収録されている楽曲Made Againでは、ポジティブに暖かく包み込むサウンドになっているのがせめてもの救いとなっております。

自分の中では、最も衝撃を受けたアルバムの一つにMarillionのBraveは確実に入る作品です。1994年にアルバムを購入して以来、何かあると手にとって聴いているフェイバリット作品です。内容は前述したように非常に沈鬱でヘヴィでシリアスなのですが、とても内容が濃いし、演奏も大変充実した作品となっています。もしチャンスがあれば、ぜひこのアルバム全体に耳を傾けていただくことを強くお薦めしたい一枚です。(購入盤Review)

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