MAYADOME
country: Sweden
style/genre: Prog Metal
website: 解散後しばらく公式サイトは存在していましたが、現在は残念ながら見ることができません。
related bands/artists: Loch Vostok, Mellow Poetry, Bassel Elharbiti, etc.
similar bands/artists: Dream Theater, Fates Warning, Lemur Voice, Eyekon, Elsesphere, Nordream, etc.
artist info: ファンの間でも人気の高かったテクニカル指向のProg Metalバンド。独特のミステリアスな雰囲気を2ndアルバムで確立。



Mayadome - Paranormal Activity
Shrapnel Records
(1996)

北欧は、スウェーデン出身の5人組による記念すべき1stアルバム。Mellow Poetry名義のデモ作品が、Shrapnel RecordsのMike Varneyの目に止まったことにより、まず最初にアメリカからアルバムをリリース。当時の彼らにとっては、シーンに自分達の存在を知らしめるという意味において、幸運なことだったのではないでしょうか。90年代の中期は、技巧的にも楽曲作りにおいても興味深い、新しいProg Metal系統のグループが登場して勢いがあったと思います。Dream Theater人気の沸騰ぶりも後押しをしたと思いますし、メタル系リスナーを中心にプログレメタルを注目する機運が高まったと思います。まさにMayadomeはそういう機運に上手く乗って、人気を次第に獲得して行ったように思います。結果的にこのアルバムはセールス的にも、Prog Metalバンドとしては割と健闘して約3万枚以上のセールスを記録したとのことであります。

さて、Paranormal Activityに関してでありますが、Shrapnel Recordsからのリリースということで、ギターが中心のProg Metalバンドかと思いきや、そうとも言い切れないのではないでしょうか?。割とバンドの技巧的なアンサンブルを主体に、歌モノに重点を置いた作品という印象です。80年代はギターヒーローを輩出、90年代の初頭はジャズフュージョン的なテイストを含むHard Rock/Metalという色合いを打ち出していましたが、90年代の中期は、当時在籍していたArtensionと同じくテクニカルな側面を持つバンドアンサンブルを主体にしたグループをMike Varneyはプッシュしようという時期にあったのではないでしょうか。Varneyというと、お馴染みのMagna Cartaレーベルでプログレメタル・プログレハード系列のグループを中心に次々と良質のバンドをリリースしていましたが、Mayadomeに関しては、Shrapnel Recordsからアルバムを配給していたと考えると、メタリックなテイストを好むProg Metalリスナーをターゲットとして狙っていたのかもしれません。

この作品におけるMayadomeの音楽性は、むしろMagna Cartaに所属しているLemur Voiceに近いものを感じさせてくれます。しかし、繰り返して聴いていくとMayadomeならではの路線を追及している側面も大変強いです。各楽曲は、それぞれテーマがあって人間の内面を抉ったような作風が強いです。シリアスでダークな内容の楽曲にあうように、演奏も感情の起伏を上手く表現したダイナミックなものになっており、重厚な演奏と共に変拍子もビシバシと炸裂して気持ちがいいです。少し脱線しますが、アルバムタイトルのParanormal Activityという言葉から、メンバーの中にX-Filesの大ファンがいるに違いないと思いました(笑)。ま、超常現象とか、エイリアンものが含まれているのかと言うと、実はそういう要素はあまり無いという印象。Paranormalの要素は、むしろ人間の内面の不可思議さや、説明できない精神の中における現象みたいなものを表したかったのではないかと思います。

上記でも触れたように、どちらかというと凝ったアンサンブルを得意としており、硬質な演奏を得意としていると思います。Fredrik Kjorlingのギタープレーは、素早いパッセージやコンプレックスなフレージング、そしてヘヴィなギターリフを繰り出すことを得意としております。他のShrapnel Records系列のプレーヤーのように豪快なソロをビシバシ展開するタイプとは大いに異なると思います(もちろん北欧のプレーヤーならではのテクニカルな側面も出している場面もあるにはあるのですが)。特にこのバンドをグイグイ引っ張っているのは、ドラマーのTeddy Mollerであります。ド迫力のプレーを展開しつつも、印象に残るしなやかなドラミングやシンバルワークなどを中心に緻密且つテクニカルなProg Metalサウンドを支えているのは、彼のリズムワークによるところが大きいと思います。音色に関しては、もう少し抜けのいい音を期待しそうになりましたが、Jonas Haagによるキーボードやソロなどのプレーで健闘しております。個人的にはドラムを中心にリズムセクションが充実したパートが、たくさん登場しており聴いていて大変楽しむことができました。

後にリードボーカリストが交代しますが、シンガーのBjorn Holmquistはこのアルバムにおいて歌の比重は大変高いものの、他の技巧的アンサンブルで貢献しているメンバー達と比較してしまうと、印象に少し残りにくい歌声かな?と思いました。Bjorn自身は、作品の足を引っ張ることはなく頑張っているとは思います。しかし、聴き手によっては強烈な印象に残りにくいシンガーかもしれませんし、歌メロがもう少し魅力的なものでアピールして欲しかったなーという感想は否定できません。濃密なProg Metal的アンサンブルを堪能できるプロダクションとしては、個人的にはおおいに満足しております。ですが、楽曲のパーツを取り出して聴いていくと、もう少し良い音質で聞きたかったかな?とも思いました。アルバム全体の流れは大変スリリングで、アップテンポのものが多く用意されておりますし、歌詞のテーマもProg Metalバンドが得意としたシリアスなものでよい起伏を作り出していると思いました。課題点として、魅力的な歌メロとサウンドプロダクションなどが、挙げられると思いますが、1stにおいてこれだけの充実した作品を作ってくれたことは僕個人は高く評価したいと思います。2ndでも素晴らしい作品を作ってくれたことを考えると、既に1stアルバムで実力派としての片鱗が如実に表れていると思います。Dream TheaterやLemur Voice辺りのバンドや、ドラマーが主導権を握っているグループが楽しめるProg Metalリスナーには、とってもお薦めです。(購入盤Review)


Mayadome - Near Life Experience
Siegen Records
(1999)

前作Paranormal Activityリリース後、メンバー交代を経てSiegen Recordsから1999年にリリースされた2ndアルバム。Shrapnel Recordsから移籍して新規一転したのか、アルバム全編に渡って非常に素晴らしいできあがりになっている。テクニカル指向でドラマティックな構成の楽曲がズラリと並んでおり、作品全体のクオリティは軽く前作を上回るグレードで私自身は、打ち震えました。ニューボーカリストとして、Bassel Elharbitiが加入参加しておりますが、この人の歌が非常に素晴らしく音楽にカラフルな彩りを与えています。またこのアルバムのレコーディングでは、前作同様キーボーディストのJonas Haggが流麗なキーボードワークを披露しているものの、アルバムリリース時には既に脱退しております。後任のキーボーディストSebastian Okupskiのプレーは、お蔵入りした3枚目のアルバムには収録されているのだと推察しますが・・・、こちらの作品には残念ながら一つも収録されておりません。

前作同様、リズムセクションも変拍子を巧みに繰り出し、かなり強烈であります。しかし、それにとどまらずメロディーやフレージングが際立って良質なものばかりだと私は思うのであります。前作では、確かにそれぞれのメンバーによるハイパーな演奏能力を強調しておりましたが、ボーカルメロディーがやや淡白なものだった印象が残っております。しかし、このアルバムは、メロディーや楽曲構成に大変気を遣っており、オープニングの楽曲からグイグイと惹き付けられました。だれることが全くなく、そのままの勢いを継続させ、最後の楽曲まで一気に楽しむことが出来ました。いやー、なんとも魅力的なアルバムに仕上がっているなーという印象が強く残りましたね。個人的には、非常に大きな感銘を受けました。どのProg Metalリスナーにもアピールする内容となっており、私は大きく唸りましたよ。はっきりいいましょう。傑作です!!

前作でも見受けられていた妖艶、且つミステリアスなProg Metal的な世界観を確立することに成功しておりますね。彼らのキャリアの中でも、エポック・メイキングな作品として認知してもらいたいところであります。・・・しかしながら、残念ながら彼らは音楽活動において色々と障壁や、レーベル側との確執なども原因になったのか、3rdアルバム「Into The Great Nothing」が陽の目を見ることなく、バンドは空中分解してしまいます。ああ!、なんと勿体無い。

このNear Life Experienceこそが、彼らの真骨頂であったのではないかと、私自身は思います。演奏技術面でもProg Metalバンドに求められるテクニカル且つ畳み掛けるプレーを得意としつつも、ドラマティックな要素やリスナーをグイグイ引っ張る要素を充分に持っておりました。現在、Mayadomeのメンバーのうちの数人は、Loch Vostokで活動を続けておりますが、ドラマーTeddy Mollerの影響下にあるかなり激しくも劇的なExtreme Metalサウンドに変貌を遂げております。シンガーのBassel自身は、ソロプロジェクトを展開しておりますが、おそらくProg Metal的タイプのものとは距離を置くロック作品を作ろうしているようですね。もっと活動を続けてもらいたかったバンドだっただけに、現在は存在していないのが惜しまれます。Dream Theaterタイプの音楽が好きなリスナーは、このアルバムはチェックしてみてください。元々Siegen Recordsからのプレス数は大変少ないので、根気よく探してください。はっきりいって、極上の素晴らしい作品なのでお薦めであります!!!。(購入盤Review)

PILGRIM WORLD推薦盤

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