POWER OF OMENS
country: United States
style/genre: Prog Metal, Technical Metal, etc.
website: http://www.powerofomens.com/
related bands: Brave, Reading Zero, Zero Hour, The Fractured Dimension, etc.
similar bands: Dream Theater, Fates Warning, Zero Hour, Vauxdvihl, October Thorns
artist info: アメリカはテキサス州出身の4人組Prog Metalバンド。(2003年秋頃に、DrummerとSingerが脱退)



Power of Omens - Eye of the Oracle
Elevate Records
(1998)

アメリカはテキサス州を拠点に活動をしている超絶テクニカルProg Metalグループの記念すべき1stアルバム。数多くのProg Metalグループを手がけてきた、イタリアのElevate Recordsからアルバムをリリースという、ある意味異色の存在かもしれません。初期の作品というだけに、グループの演奏や楽曲構成全体を見渡してみて感じますが、このころは若さ漲るギラギラしたパッションを感じます。それにしても全編に渡ってこれだけのスリリングな演奏と、これでもかといわんばかりの変拍子大会や、息つく暇を与えないテンポチェンジ、そしてポリリズムを縦横無尽に駆使しており、個人的には痛快極まり無く大変楽しんでおります。本当にテキサスという場所は、一体どんなシーンが形成されているのか本当に興味深いです。おそらく彼らの源泉となっている音楽性は、Dream Theater, Rush, Fates Warningなどの大御所からインスパイアを受けているだけでなく、地元のヒーローであるWatchtowerSpastic Inkからの影響も大きいと思います。しかしながら、このグループの場合、メンバーの半分ほどはラテン寄りの系譜を持っているのか、確かにテクニカル指向の怒濤の演奏が終始展開されますが、南米やスパニッシュに通じるリズム感覚は大変新鮮でありましょう。各メンバー本当にOver The Top状態というか、ハイテンションの状態で、とにかくキメまくり、リードプレーでもインタープレーでも攻め続ける姿勢が本当に惚れ惚れするほど素晴らしい。それにしても、Power of Omensに関してはリズム・セクションが大変濃密です。このテクニカルな演奏が激しく交錯する中で、シンガーのChris Salinasも、Queensrycheを彷彿させるハイトーンを駆使して負けずに自分を表現しています。圧巻は、ドラマーのAlex Arellanoであります。Virgil Donatiを彷彿させる、その手数の多さと尋常で無い躍動感はここでも大活躍です。やはり、これだけ凄まじく展開している楽曲が並んでいるだけに、歌メロの観点からみていくと、もう少し魅力的なメロディーラインが欲しかったといえば、贅沢な注文になるでしょうか・・・。それからプロダクションに関しては、あともう少し音質がよければ・・と言いたくなるところですが、この時期ではよく頑張っていたと思います。とにかくテクニカルでビシバシと攻め立てるProg Metalが好きな人には、目から鱗が落ちる怒涛の演奏が楽しめると思います。残念ながら、現在このアルバムは非常に入手困難な部類になってしまいました。ですが、この作品の発展系として次回作であるRooms of Anguishは、この作品の弱点強化が練られていますので、まずは2ndアルバムを堪能してみてはいかがでしょうか。(購入盤Review)


Power of Omens - Rooms of Anguish
MetalAges Records
(2003)

かつては、イタリアのElevate Recordsより1stアルバム「Eyes of The Oracle」をリリース後、紆余曲折を経てあのPower of OmensがProg Metalシーンにカンバックしてくれたことが個人的には感慨深い。その彼らの2枚目のアルバムRooms of Anguish上において、凄まじいまでの気迫を感じることができる。1枚目でもテクニカルな路線を追及していた彼らだったが、磨きをかけた超絶技巧が炸裂している。Chris Salinasの豪快なハイトーンボーカルを筆頭に、変拍子の嵐と各楽器陣によるハイテンションなアンサンブルには圧倒されてしまう。ある意味Prog MetalとTechnical Metalの両方の領域を睨んだ作風である。

スタイル的には、QueensrycheFates Warningをハイパーにした感じ。バンドで例えるなら、Zero Hour, Watchtower, The Quiet Room, All Too Human, Sieges Even, Dream Theater, Symphony X, Spiral Architectといったタイプのバンドが持っている高い技巧性や難解なアンサンブルなどが特に好きなリスナーには、大きくアピールする内容と言えます。全編に渡って、高密度且つスリリングな演奏力を楽しんでいただけるでしょう。彼らは、以前Elevate Recordsからアルバムをリリースしていたせいか、イタリアのバンドと見られていた時期があったようだが、実は彼らはテキサス州を拠点として活動をしているバンドなのです。それにしてもテキサス州出身のバンドというのは、どのバンドも恐ろしく技術的に難解なアンサンブルを得意とするバンドが少なくないのはどうしたことなのだろうか。おそらく、テキサスにはテクニカル系をサポートするシーンがあるのかもしれない。個人的には、Zero Hourにも肉薄する実力者として認識している。

この2枚目に関しては、前作のテクニカル路線を延長・拡大したスケールを感じさせる。Rooms of Anguishを聴く限りでは、彼ら一人一人の怪物ぶりにより磨きがかかってきたような気さえする。デビュー以来、この数年間かなりの長い間苦労を重ねていただけに、このアルバムで聴く事のできる研ぎ澄まされたアンサンブルに勢いとパワーに度肝を抜く。それにしても、凄い。テンションがとぎれることなく、どんどん進んでいく。マジでアンサンブルの密度がどの曲も、ひたすら濃い。ゲストミュージシャンとして、あのBraveからMichelle LooseReading ZeroChris Royが参加している。Andrew Ned Sanchezが、主なシンセソロを担当しているが彼は殆ど第5番目のメンバーとしての機能を最大限に果している(4曲目のA Toast To Mankindにおけるシンセリード辺りは自分の好みの路線です)。バンドのリーダー格として、David Gallegosによるギタープレーも豪快なものがあり、キーボードやスパニッシュフレーバーを加味したアコースティック系のギタープレーも熱い。

このアルバムのテーマや楽曲のトーンを支配しているボーカリストのChris Salinasの声質や歌いまわしが、QueensrycheのGeoff TateとFates WarningのRay Alder両人を彷彿させる部分が多い。思うに、このアルバムの主要なテーマや歌詞内容は、Chris Salinasのペンによって書かれた彼自身のこれまでの体験、心深くに刻み込まれた信念や信仰、心象風景などからインスパイアされたものであろう。残念ながら、そのChrisは今年を最後にバンドを脱退している。

このバンドの原動力と言ってもいいAlex Arellanoのドラムプレーは、若手Prog Metalプレーヤーの中でもかなりハイレベルの部類に到達している一人ではなかろうか。凄まじい手数と足技のドラミングやシンバルワークを披露しており、Alexの非凡な才能を爆発させている。この人は、若手の中では不思議なほど色んな引出しを持ったプレーが、個人的には大きな魅力の一つとなっている。短期間の間だが、Alex ArellanoとはAOLのチャットを通じて何回か連絡を取り合ったことがありますが、非常に素晴らしい好青年で高い実力を持ちながらも謙遜な人でありました。どうやら彼は日本の特撮ものが好きらしく、マグマ大使あたりが大好きらしい(笑)。・・・残念ながら、そのAlexも今年Power of Omensを脱退してしまった。彼のような才能豊かなドラマーが、このまま埋もれてしまうのは何とも勿体ない話だ。彼にはぜひテクニカル路線のバンドに参加して、もう一花咲かせてもらいたいものである。

最後にベーシストのChris Herringについてだが、彼は脱退したMatt Williamsonの後任者としてギターリストのDavid Gallegosにも劣らない凄いベースラインやフレージングを炸裂させていてあなどれない。こういうPower of Omensのような複雑なアンサンブルの決めを繰り出すには底辺のリズムセクションが強固でなくては、至難の業であるのは言うまでもない。しかし、Chris HerringとAlex Arellanoの2人を中心としたリズムセクションが緻密に繰り出すチームワークが、このバンドに大きく貢献している。

本当にこのアルバムで登場する音の数は、非常に膨大なものである。月並みな表現だが、非常に多くの情報がこのアルバムには詰め込まれているので、何回も繰り返し聴く事により、新しい発見を見出せると思います。僕も何回か聞き込んでいく内にWith These WordsOnly A Dream, A Toast To Mankindを中心に楽しむポイントを見出してきました。特に7曲目に収録されているIn The Endは、20分以上にもわたる難解なProg Metalが終始展開されている。この7曲目だけでも聞き手が情報過多になる恐れがありそうだ。いくらこの手の音楽がすきでも胸焼けを起こす可能も無きしもあらず(笑)。しかし、これだけ複雑な楽曲を実際のライブでも演奏するPower of Omensという連中は、Zero Hour, Spiral Architect, Watchtowerといった実力者達に並ぶモンスター級のバンドだと思う。Power of Omensの場合は、場合によっては聞き手を選んでしまう恐れがあるが、しっとりとした夜の音楽としても楽しめるOnly A Dreamという曲が用意されておりますよ。

2枚目をリリースしたものの、主要メンバーを2名失った彼らが目指すものが何なのかが今後の課題であろう。新しいドラマーも加入したようなので、今後はメンバーが固まり次第また新しいテクニカル指向のアンサンブルを聴かせて欲しい。今年2003年に聴いたProg Metal系バンドの中では、Rooms of Anguishは非常にインパクトの高いアルバムの一つになりました。(購入盤Review)

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