PAIN OF SALVATION
country: Sweden
style/genre: Prog Metal, Advanced Emotional Crossover Metal, New Tendencies, etc.
website: http://www.painofsalvation.com/
related bands/artists: Meshuggah, Transatlantic, The Flower Kings, Stonehenge, etc.
similar bands/artists: Wolverine, Faith No More, Fragile Vastness, Dynamic Lights, Fates Warning, etc.
artist info: 確固たるアイデンティティと無限の可能性を秘めた、新世代プログレメタルバンドの筆頭格。



Pain of Salvation - The Perfect Element Pt.1

Inside Out
(1999)

スウェーデンを代表するプログレッシヴ・メタルバンドによる、通産3枚目のアルバム。現在のプログレメタル・シーンにおいて、Pain of Salvationの名前は避けて通れないところでありましょう。Dream TheaterFates Warning達とも全く違う、独自の世界をファーストの時点で確立している点が凄いところであります。彼らの場合は、デビューから一貫してコンセプトに基づいたアルバム作りに邁進してきています。個人的には彼らの全アルバムの中では、このアルバムと1stのEntropiaを凄く好んでおります。私個人の見解に過ぎないと思いますが、このThe Perfect Element Pt.1でトップクラスの仲間入りを果したのではないでしょうか。

今回の作品で驚かされた事は、これまでの作品と違って我々にとって身近で深刻な問題をコンセプトとして取り上げていることでした。現代社会が抱えている様々な問題: 例えば「青少年犯罪」、「虐待問題」、「精神的・肉体的苦痛」や「家庭崩壊」といったことを想起させるテーマを、Pain of Salvationのリーダー格Daniel Gildenlow氏が取り上げております。このアルバムを通して強く感じることは、現代社会に生きる我々にとって無視できない大きな問題が家庭や人間関係において存在することを教えてくれていると思います。どのように家族と向き合っていくか、人間関係が破綻した結果どのような悲しみや苦痛がのしかかってくるのか?・・・このアルバムを聴きながら、歌詞と音楽に向き合うたびに、そういったシリアスな気持ちになります。ライナーノーツにも書いてあるように、こういう状況に全くかかわりのない人たちやリスナーにも、犠牲者達が通ってきた「悲壮感」や「慟哭」をThe Perfect Elementに収められている楽曲や歌詞から汲み取る事ができるのではないでしょうか。一音・一音、そして言葉の一つ一つが、心の中に鋭く突き刺さってくるかのようです。厳粛な気持ちにさせられる作風だと思います。そういった観点から見ていけば、歌詞の世界観や悲しみに彩られた音像やエモーションの起伏といったものは、Fates WarningQueensrycheなどの世界に通じると思います。

このアルバムで登場する2人の女性と男性に焦点を合わせ、感情の起伏にあわせてドライブするハードなProg Metalサウンドと緻密な演奏力は、流石で非の打ち所がないと思います。その一方で、暫しの安らぎと開放感を感じさせる場面も登場し、終始あきさせない作風となっております。テンションが高く激しく怒りに満ちたUsed、柔和な一面も垣間見せるIn The Flesh, 緻密なアンサンブルと構成を持つIdioglossiaそして見事なメロディーラインが楽しめるReconciliationなどが、個人的にはフェイバリットの楽曲です。勿論他の楽曲も、強烈なナンバー揃いと言えます。各メンバーの力量も大変高く、重要なパートを担っています。特にDaniel Gildenlowのボーカル・ワークが凄まじく、非常にエモーショナルです。またDanielは、ギターワークも大変素晴らしいのでありますが、ストーリーテラーとしても大きな役割を果しております。楽曲の持つ世界観と歌詞やコンセプトを執拗なまでに大事にした人は、Prog Metalシーンの中でも随一でしょう。その他では、Danielの兄弟Kristoffer Gildenlowによる豪快なベースワークと、テンションの高いJohann Langellのドラミング。繊細で広がりのあるキーボードワークを披露するのが上手いFrederik Herrmansson, ここぞというところで頑張りを見せるJohann Hallgrenのギターワークなどが顕著なところであります。各メンバーのチームワークは、これまでになく強固なものとなっていると思います。

面白い事にPain of Salvationのアルバムの中で一番好きなものは、リスナーによって全く違うようです。日本だけでなく、世界中のPain of Salvationファン全体にいえることなのですが、皆さん非常に熱心にバンドを応援しております。バンドとファンの間が大変良好で、今現在も各国のファンがPain of Salvationの公式そして非公式ファンサイトでバンドを大きくサポートしています。The Perfect Elementアルバムの続編としてPart 2も考えているそうで、今度は人間関係を飛び越えて「社会全体の病巣」に焦点を合わせたものを考えているということで楽しみであります。またこのアルバムに関してはInside Outからリリースされた限定盤が出ております。そのボーナスCDにはデータトラックや、過去に日本でリリースされたボーナストラックなどが収録されております。(購入盤Review)

PILGRIM WORLD推薦盤


Pain of Salvation - Remedy Lane
Inside Out
(2002)

現在のProg Metalシーンを牽引する重要なグループとして、確固たる地位を築いたPain of Salvationにとって通産4枚目となるアルバム。彼らはコンセプトに基づいた作品を連続してリリースしており、音楽やサウンドだけでなくテーマや内容についても年々大きな注目を集めていることは言うまでもございません。このRemedy Laneは、これまでよりもさらにリーダーであるDaniel Gildenlow自身のパーソナルな経験が如実に投影されたディープで真に迫った作風と言えるかもしれません。

ご存知のように大きく3つの部分で構成されており、1回だけで全ての内容を理解するのは至難の技とも言える、リスナーのチャレンジ精神を試すものになっているのではなかろうか?と思います。実はこの作品を楽しむまでに、非常に随分時間がかかりました。自分の場合、Pain of Salvationの過去3作はすんなりと楽しむことができたのですが、Remedy Laneに至っては本当に攻略するのが難しいアルバムという印象がずっと付きまとっていました。歌詞やテーマの内容から細かい心理描写に至るまでディープ・・・、時には突き刺してくるかのようなエモーションとサウンドも相まって、トータルな意味で「難解」であるとしかいいようがありませんでした。

「それは考えすぎですよ」と言われれば、確かにそうなんですが、Remedy Laneに入り込むのに相当エネルギーがいる気配がヒシヒシと感じられました。何やらこの作品は、表面的に聞き込むだけでは理解してもらうのを拒絶するかのような雰囲気も持っているのかもしれません(うーん、多分考えすぎでしょうね〜・・)。リスナーの受け皿によって、これだけ感じ方の違う作品を作るのがとてつもなく上手いのがPain of Salvationの凄みなのかもしれません。

しばらく時間を置いて、またじっくり聴いてみたら不思議なことに今度はすんなりと受け入れることができました。確かに腰を落ち着けて聴いてみると、サウンドやスタイルとしてはEntropiaThe Perfect Elementの流れを受け継ぐ部分もあります。その辺りから、楽しんでみることにしたのが突破口になりました。でもPoSは、同じようなアプローチをもう一度改めて踏むタイプのグループではないので、以前のものを大事にしながら、新境地を開いていると思いました。ハードに攻め込むパートと、至福の時をアコースティックに且つソフトに表現する部分まで、流石としかいいようがありません。

この作品はあらゆる見地から見て、従来のProgressive Metalサウンドとはまた違う流儀を確立したと言えるのではないでしょうか。本来彼らが最も得意としているエモーショナルな側面やテーマ・・、そして表現したい演奏やサウンドなどが見事にがっしりと構築されていると強く感じました。バンドの演奏自体も前作にひけをとらないスケールの大きなものであります。これからも目が離せない存在であるということは間違いありません。時間はかかりましたが、少しづつこの作品の魅力を味わいながら、自分自身もスローペースでPain of Salvationの音楽と彼らの世界を堪能していきたいと思います。Pain of Salvationのファンの中には、色んな意味でこのアルバムが最高傑作という意見を持っている方もおられるみたいですよ。この作品が、いろんな意味で興味深く内容が濃いという点に関しては、その通りだと思います。(購入盤Review)

PILGRIM WORLD推薦盤

discography:

注:リリース年代は、海外盤のものが中心です。ご了承いただきますよう、よろしくお願いします。


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