Spock's Beard - The LightMetal Blade/InsideOut
(1995)
アメリカを代表するプログレッシヴ・ロックバンド、Spock's Beardにとって記念すべき初のファースト・アルバム。西海岸はLAを拠点に活動していたソングライターのNeal MorseとギターリストAlan Morse兄弟達が制作したプログレ指向の強いデモ作品がきっかけとなり、母体が形成されます。やがて、Tears for FearsやGenesisなどとの仕事でも知られていたNick D'Virgilio、Dave Meros達がバンドに参加。そして、LA在住の敏腕キーボードプレーヤー奥本亮氏が最終的に加わり、Spock's Beardは本格的に90年代のプログレシーンを席捲していくことに成功しました。アルバムをリリースする毎に、往年のProg Rockファンのみならず、新しいファン層を開拓し現在に至るまで活動をコンスタントに続けています。またライブ活動やツアーも精力的です。彼らが、特に知名度を挙げたのはプログレのファンやサークルのサポートのみならず、Dream TheaterのMike Portnoyの貢献も忘れてはならないところでありましょう。Mikeが、Spock's Beardの大ファンということもあり、Prog Metalファンだけでなく一般のHR/HMファンにも注目を集める結果に結びついたのではなかろうか。
1stアルバム、The LightはSpock's Beardのファンから熱狂的に支持をされている一枚です。僕自身もこのアルバムには、大変感銘を受けました。全部で4曲ですが、どれも組曲形式のロングフォームの形態をとっています。特にThe Lightは、エピックで壮大な流れを持つ大曲で、親しみやすいメロディー・複雑な構成・緻密なボーカルハーモニー・豪快なインストセクションを楽しむことができます。非常にユーモラスな曲調でありながら、悲哀に満ちており、そして叙情性豊かな楽曲となっており、次に登場するGo The Way You Goも、西海岸的な曲調にプログレ的アプローチが似たような形で取られており魅力的です。後半のThe WaterそしてラストのOn The Edgeも、ダイナミックで迫力のある楽曲であります。私は特に前半の2曲には、ゾッコンであります。
各メンバーが、セッションやビッグネームとの共演などで知られている実力者だけに、演奏も非常に充実しております。畳み掛けるパートや忙しい変拍子のセクションなど、アンサンブルは本当に見事なものがあります。メロトロンやハモンドオルガン〜キーボードのパートは、クレジットには入っていなかったものの、奥本亮氏による特徴的な暖かみのあるサウンド・メイキングが素晴らしい。八面六腑の活躍を見せるNeal Morseは、このバンドの中心人物として歌、ギター、様々なキーボード・パートで実力を発揮しております。Nealの歌や声質に賛否両論あるものの、ストーリーテラーとしてだけでなくメッセージ性の強い楽曲を大変巧く表現しているソングライターだと思う。主にファニーでユーモア感を出すのを得意とするAlan Morseのギタープレーも興味深い。Nick D'Virgilioは、バンドの原動力となっており、あらゆるリズムチェンジに対応し、スリリングなドラミングを展開している。ベーシストのDave Merosは、Spock'sに欠かすことのできないリッケンバッカーによる固めの音を強調したベース奏法で、アップテンポ且つビジーな部分が魅力的ですね。とにかくバンド全体による演奏が見事だし、楽曲もキャッチー且つ面白い。プログレという音楽に新しい光を投じたアプローチを高く評価したい。引き出しをたくさん持った、非常に面白い存在のProg Rockバンドであります。Spock's Beardに興味を持ったのであれば、少なくともこのThe LightそしてSnowの2枚は必聴のアルバムだと思う。(購入盤Review)
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