VENTURIA
country: France
style/genre: Prog Metal, Hard Prog, etc.
website: http://www.venturiaofficial.com/
related bands/artists: Kevin Codfert (Adagio), Zero, Charly Sahona, etc.
similar bands/artists: Dream Theater, Dali's Dilemma, Dreamlost, Arabesque, Vanden Plas, Lord of Mushrooms, Circus Maximus, etc.
artist info: 男性と女性のボーカリストを擁する、新進気鋭のテクニカル技巧派Prog Metalバンド。メロディアス且つドラマティック!。



Venturia - The New Kingdom
Lion Music
(2006)

近年、非常に興味深いグループを次々と輩出しているフランス。昨年だけでもSpheric Universe ExperienceLalu、そしてLord of Mushroomsなど、国際的にも次々と実力のあるニューカマーが、Prog Metalシーンにも登場しております。特にここ最近のフランス勢の活躍は、お世辞抜きで目を見張るものがあります。フランス出身というだけでソッポを向けてしまうのは、大変勿体無いものが多いということです。まだシーンには完全に浮上していないものの、インディーズや自主制作でリリースしているグループなどを含めると、フランスのProg Metalシーンというのは我々が知らないところで、かなり盛り上がりを見せているのではないでしょうか。フランス出身のグループというと、まだ偏見の目で見られることが多いかもしれません。しかし、90年代中期・後期以降のイタリア系Prog Metalシーンの隆盛を思い出してください。もう国籍や出身などにこだわって音楽をチョイスする時代では無いような気がいたします。

今回紹介するVenturiaもフランス出身のバンドですが、新人とは思えない楽曲のクオリティと演奏能力に驚かされました。ドラマティックな楽曲構成と、めくるめくようなテクニカル指向のProg Metalサウンドが好きなリスナーには、きっと楽しめる筈です。スタイルやサウンド指向は、確かにDream TheaterDali's DilemmaVanden Plas等に通じるような高品質な仕上がりで、大変グッっと引き込まれることでしょう。このグループがやっていることに、大変近いことをやっているグループと言えば2人の女性シンガーを擁するオランダのArabesqueを挙げることができると思います。しかし、Venturiaの方が最初聴いた印象では、全体的に親しみやすいかもしれません。最近の新人Prog Metalグループは、Circus Maximusなどのように本当に演奏技術だけでなく楽曲制作においても長けているものが少なくありませんが、Venturiaも負けず劣らず作品の完成度が高くて驚きです。

やはり若いメンバーで構成されているので、テクニカルで勢いのある部分が多いです。その一方、彼らの場合は男性と女性ボーカルのバランスを非常に上手く使い分けており、ボーカルメロディーは決してなおざりにしていません。普通ボーカリストを2名擁するバンドというと、上で挙げたArabesqueなどの一部の例外を除けば、それほどProg Metalシーンには多く存在していません。ひょっとしたらLacuna Coil辺りからインスパイアされたものかもしれません。ボーカルラインや掛け合いなどは、ArabesqueLacuna Coilの両方の要素を持っている、といったような具合です。Lydie Robinの歌声が大変心地よく、センシュアルな部分を押し出しておりGothic Metalから女性ボーカル全般が好きな人にもアピールするでしょう。唯一のアメリカ人メンバーになりますが、男性ボーカリストのMarc Ferreiraは他のProg Metalシンガーとは大分異なるスタイルを持っているのが特徴です。声質やスタイルは異なりますが元Dali's DilemmaMatt Bradlyみたいに、典型的なProg Metalシンガーのようなスタイルではなく、現代的なロックシンガーという風情と声の持ち主という印象。その辺りのコントラストが面白い。もちろん、ほぼ全編において英詩で全部歌われているのは、言うまでもないことです。

このファーストアルバム「The New Kingdom」は、全部で8曲で構成されております。ロングフォームでエピックな楽曲から、メリハリの聴いた分かりやすく親しみのある楽曲までバラエティに富んだ内容と言えるでしょう。楽曲によっては、非常にメロディアスなハードロックと言ってもよいストレートな作風や場面が登場しています。かつてのドイツ方面のグループなどにも顕著でありますが、フランスから想起されるイメージとは全く異なる雰囲気とサウンドスケープを武器にしていると感じました。ゲストとしてAdagioの現Keyboard Playerにしてエンジニアリングも担当しているKevin Codfertのパフォーマンスが非常に素晴らしく、まるで正式メンバーのごとく縦横無尽に様々な場面で活躍しているのが嬉しい限り。そして、このバンドで注目は、ギターリストのCharly Sahonaでありましょう。彼は既にLion Music主催のShawn Lane Tributeでも、その技巧的なパフォーマンスで周囲をあっと言わせる実力を充分に持っておりましたが、このVenturiaでも流石のプレーを披露しております。またリズムセクションも大変豪快且つ繊細な演奏力を持っており、大変スリリングなパフォーマンスを展開しています。

いやー、しつこいと思われるかもしれませんが、本当にここ数年のフランス勢の活躍はとても興味深いです。英語圏外のグループは、演奏力や楽曲構成は大変素晴らしいと評価されるものの、英語で書かれた歌詞やフレージングや抑揚のつけ方などで、かなり苦労していると思います。しかし、このバンドは正式メンバーにアメリカ人シンガーがいるということは、かなりの大きなアドバンテージになっていると思います。ファーストアルバムで、これだけの素晴らしいものを作っていますが、どうやら既に次のアルバムに向けての制作も順調に進んでいる気配です。今後もどんどん成長していきそうな存在だけに、大変期待しております。Prog Metalリスナーは、ぜひVenturiaの作品にトライしてみてください。

PILGRIM WORLD推薦盤


Venturia - Hybrid
Lion Music
(2008)

フランス出身のProg Metal系グループによる2ndアルバムです。2006年に発売されたVenturiaの1stアルバムが大変好評だったので、新作のリリースに期待をしていたリスナーも多かったのではないでしょうか。この新作はタイトルからして'Hybrid'という名前が付いていることから、「ひょっとして?」と不安になった人もいるかもしれません。その予感は、ある程度は的中していると言えます。確かに1stアルバムと比べると、随分音楽性が変わったようなところが目立ちます。今回は前作とは異なる手法を大胆に取り入れていることが良く分かる仕上がりになっていますね。おそらくリーダーのCharly Sahonaのインプットが大きいのでしょうが、エレクトロニカ系やデジタル・ビート〜プログラミングなどを含んだ、非常にモダン寄りなものになってます。アトモスフェリックでエレクトリックな響きのある実験的な要素を加えています。個人的には打ち込み風の音やシンセサイザーのサウンドが目立つところは、問題なく心地良く楽しめました。またサウンド自体もよりヘヴィーな側面と強調しているというか、意識したところが随所に飛び出します。時折、ガツン・ガツンと重い音色を使っていますし、それに付随する強調したリズムやビートを登場させています。曲の雰囲気にもよるのでしょう、場面によってはあえてザラザラっとしたようなラフな質感を加えています。

ここまで読んでいくと、前作のようなドラマティックな正統派Prog Metal系サウンドの延長線を期待している人はガッカリするかもしれません。でも安心して欲しいのは、彼らの場合はProg Metalサウンドや技巧的なパートも顔を結構出しますし、新しい要素と前作で培ったVenturiaのスタイルを上手く融合していることは高く評価して良いと思うんですよ。全編がモダンなメタルに完全に移行したとか変貌をしてしまったという風には自分は思いませんでしたから。Charly Sahanaによる流麗でテクニカルなギターソロは登場するところは、前作同様で巧者としての実力を発揮しています。現代的な指向は強まっていますが、男性と女性ボーカルの両名のメロディーを生かした楽曲作りを念頭に入れています。今回は、特に楽曲を中心にしたアプローチということで、自分達にとって納得の行くものを作りたかったのだということがビシバシと伝わってきます。

楽曲指向とは言っても、派手めのテクニカル演奏は割りと多く登場してきます。よりギターオリエンテッドな度合いは高まったと思いますが、シンセサイザーやプログラミングなどによる音もバックグラウンドで目立っています。一応クレジットの方を見ると前回のように専門のキーボーディストは迎えておらず、シンセやキーボードのパート・プログラミングもCharlyが頑張って担当しています。リズム・セクションも単調になったという訳ではないので、ご心配なく。ここぞという時にはProg Metalバンドらしい瞬発力のあるコンプレックスな部分は充分に登場してきます。多くのリスナーを意識して狙っているのかもしれませんが、分かりやすいビートを強調しつつストレートな路線を目指していることは確かです。とにかく、典型的なProg Metalサウンドから脱却したいというメッセージは、音楽を聴いていて強く感じられる所です。近い路線で言えば、同じフランスのHautevilleのサウンドをよりヘヴィーで現代的なメタル指向に料理したという感じがしました。サウンドが全く似ているという意味ではないのですが、言うなればEventの2nd以降やDigital Ruinぽい部分を思い起こさせることもあります。典型的なProg Metalとは異なりますが、演奏面とかプロダクション面から見ると刺激的な内容で楽しめました。

前作のようなスタイルやDream Theater的な路線を期待しすぎない方が良いでしょう。このアルバムは非常に楽しみにくいアルバムにはなるかもしれないというのは、覚悟しておいて下さい。うーん、ある意味Venturiaのファンにとっては、このアルバムは問題作として捉えられているようです。我々リスナー側から言うと、何故この前の「The New Kingdom」で披露していた音楽性をさらに追及してグレードアップした内容にしなかったのか?、という疑問はどこかに残るのかもしれません。その反面、モダンなサウンドや、新しい要素を取り入れたProg Metalを聴いてみたい・・多分楽しめそうだ!という人にはアピール度がグーンと高いです。興味深いことに、通常Prog Metalを聴かなかった人達がVenturiaHybridを聴いて結構嵌ったという意見も出ているようです。女性ボーカルのLydie Robinが主体となっている楽曲は、これまでと同様センシュアルで艶やかな表現を出していますが、ある意味ポップ・ロック的な親しみやすさが見事に嵌っているところが魅力と聴こえてくるのかもしれません。

実はこんなことをタラタラと書いている自分も正直言って、このアルバムの序盤辺りを聴いていて凄く不安になりました(笑)。ですが、前作とは切り離して・・・というかある程度、割り切って別バンドの作品を聴いているつもりで、何度か挑戦していくうちに段々浸透してきました。"Running Blind"みたいな曲では、中盤から後半部分にかけて、Prog Metalグループならではの濃厚なインストも登場します。それから男性ボーカルMark Ferreiraをフューチャーした"Hottest Ticket In Town"は、このアルバムの中でも従来のProg Metal路線を大事にした濃密でインパクトのあるテクニカルな展開を見せていてハイライトの一つです。特に今回は、ギターやシンセサイザーによるコンプレックスなユニゾンプレーで盛り上がる場面も目立ちましたし、リズム隊の活躍によりドッシリと引き締まっています。バンドによるパフォーマンスは全体的に大変良好でカッコ良い。サウンドやプロダクションも大変しっかりしているので、次の世代への架け橋となるProg Metalサウンドを追求している姿勢は高く買ってあげたいと思います。とりあえず購入しようかどうか迷っている方は、MySpaceへレッツ・ゴーですよ。http://www.myspace.com/venturiamusic

PILGRIM WORLD推薦盤

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