GUITAR IDOL (2008)
country: Multi-National
style/genre: Guitar Instrumental, Technical Rock, Hard Fusion, Crossover, HR/HM, Progressive Rock, etc.
website: http://www.alloutguitar.com/
related bands/artists: Gustavo Guerra, Lyle Watt, Daniel Gottardo, Ben Randall, Jas Morris, Muris Varajic, Masahiro Aoki, etc.
similar bands/artists: Joe Satriani, Steve Vai, Greg Howe, Frank Gambale, John Petrucci, Kiko Loureiro, etc.
artist info: 2008年度のGuitar Idolで注目を集めた実力派ミュージシャン達の演奏を収録したコンピレーション・アルバム。



Various Artists - Guitar Idol 2008

Lion Music
(2008)

ここ数年というものAmerican Idolのようなタレントや可能性を秘めたスターを在野から発掘する企画番組が海外では盛り上がっているそうです。いつの時代でも、自分のチャンスを掴むために登竜門的な企画や番組に参加して、頭角を現すきっかけ作りが重要になってくるのがエンターテイメントの世界というものでしょう。今回のGuitar Idol 2008は、新しい世代のギター・ヒーローを発掘するという名目でギターリストによる・ギターリストのためのコンテスト大会が、2008年のロンドンで開催されました。文字通り世界中からのエントリーがあり、総勢1000組近くの参加者からの選考に。最終的に選出された12組がグラウンド・ファイナルに進出。2008年の6月14日(土曜)に行われたLondon International Music Showのステージでそれぞれが熱の篭った演奏を繰り広げ、最終的にはブラジル出身のギターリストGustavo Guerroが2008年度の優勝を飾りました。我こそ腕に自信のあるものは・・・という感じで若手のギターリスト達を中心にかなりの応募があったようです。

さて、気になるGuitar Idol 2008のCDに収録されているミュージシャン達の音源やプレーはいかなる内容になっているのか。蓋を開けてみると、ロンドンのグランド・ファイナルに出場した優勝者を含む12組、そして本来同じくファイナルのステージに出る予定であったがステージに立てなかった3組、そして審査員が選考して評価の高かった5組の合わせて18人の演奏が収録された内容になっています。同じ日本人として嬉しかったのは、G5というプロジェクトで活躍しておられるMasahiro Aokiさんが含まれております。コンピレーションの中で存在感を示す素晴らしいパフォーマンスで心が躍りました。メロディーもインストの構築性も大変高いプレーとして、個人的にもイチオシの一人。

続けて個人的なハイライトとお気に入りをピックアップしてみると次のような感じです。まずは、イタリア人ギターリストのDaniele Gottardoのプレーに注目です。なんていうかMassimo IzzizariGreg HoweFrank Gambaleに通じるかのようなスタイルですね。不思議な浮遊感のあるメロディーと抜群のテクニックとエモーションを持ったハード・フュージョン風のサウンドで大変耳を惹きました。音のコントロールが素晴らしく、とにかく優れた感性とトーナリティーの持ち主だと思います。優勝者のGustavo Guerroのような元気なプレーも嫌いではないのですが、Danieleのプレーに魅力や惹き込まれるものを感じました。ただ、そつなくこなすというか燃え上がるようなハードロック的要素を求める人にはちょっとシンドイかもしれませんが、私の中では、このクールな中にも色んな可能性がDaniele Gottardoのプレーの中に含まれているようで堪能しました。

グランド・ファイナルに残ったプレーヤーの中には地の利があるのか、数名ほどイギリス人プレーヤーが目立って活躍しているように思いました。その中ではストレートながらも印象的なロックプレーを心がけていたJas Morrisも印象に残る良いプレーです。ギターのトーン等からか、ある意味Errorhead/Electric OutletMarcus Demlに通じるところもあるかなーと感じたりしました。全体的にはエモーショナルでありながら気品に満ちた雰囲気があるように見受けることができました。音はロックしていますが、丁寧且つ上品なところが英国らしいとも感じました。同じくイギリス出身のTom Qualeも印象に残るプレーを聴かせてくれます。どちらかというとジャズ・フュージョン畑の人でありますが、音質は大変良好ですしフレージングの組み立て方がスムーズと感じました。完全に自分が表現したいものを分かっているところとか、リズムやバッキングの面白いサウンド、グルーヴィーな場面に遭遇するとデンマーク出身のSteen Grontved辺りを想起させるお洒落感があります。

東欧から参加している人達もかなり頑張っていると思いました。ボズニア・ヘルツェゴビナ出身のMuris Varajicは個性的というか東方的というかエキゾチックなエッセンスを含むプレーで存在感を見せています。テクニカルな技法とプログレッシヴな要素を融合させたようなところもあります。なにやらGreg HoweScott Mishoe達がPlanet Xとジャムしたら、こんな感じになるのかもと勝手に想像させるものがあります。個人的には大変気になる存在です。同じく東欧方面でエントリーしていて驚いたのは、ブルガリア出身のDimitar Nalvantovさん。実はこのコンピレーションCDの中で唯一知っていたミュージシャンだったので、なんだか嬉しくなりました。この方は、Murisとは異なって割りとJoe Satriani直系といいたくなるようなスタイルですが、比較的分かりやすいプレーを信条にしているパフォーマンスだと思います。

カナダ出身のChris Feenerは、他のプレーヤーと違って初っ端からブルーグラスぽい演奏を絡めてくるのでカントリーロック系か?と思いました。しかし、全体を通して聴いて見ると、Steve Morse Bandのような勢いと畳み掛けるスリリングな展開を得意とする人という印象です。かなりストレートに攻勢をかけてきますが、Chrisのプレーも気に入りました。北米方面からの選出されているギターリストは、ひょっとしたら彼だけだったかもしれません。その一方目立っているのが、ブラジルや南米出身のプレーヤーの演奏です。優勝者や上位に上がっている他のブラジル出身のプレーヤーよりも親しみやすかったのは、Andre Noronha。大変メロディアスなスタイルで、John PetrucciSuspended Animationに収録されても不思議でないような感じのエモーショナルな情感を込めたRockバラードぽいもので耳を惹きました。基本的にブラジル勢は、勢いとハードエッジな要素を重視している人達が多いという印象。個人的には、南米からの参加者で興味を持ったのは、アルゼンチンのギターリストSilvio Gazquezだったりします。この人はGeorge Bellasのコンテストにも参加したこともあって、Prog Metal風なアプローチを感じさせる演奏をしており、今後も頑張って音楽性を完成して欲しいと期待したくなります。Prog Metal風のアプローチ繋がりで見ていくと、オーストラリア代表のDenis VlachiotisEvergreyをインストでプレーしたかのようなスタイルでPower Metalの要素も感じさせてくれます。最後になりますが、ジャッジが優勝を決めただけあって、Gustavo Guerroは全体的な完成度の高さとパフォーマンス、そして元気の良さが際立っています。Marco SfogliMoglbl Trio等の良い部分を抽出したかのような頼もしい部分も感じさせました。

インストギターが好きな人は、それぞれのギターリスト達のカラーが出ているので、どれも楽しめるのではないでしょうか。確かに自分も派手な弾きまくりギター演奏を聴くのは好きなほうですが、流石にアルバム丸ごと楽しめるかどうかは未知数というか大丈夫だろうか?と最初は不安でした(笑)。しかし、最終選考に残ったファイナリストだけでなく業界人やギターが大好きなプロフェッショナル達が注目した18組だけに、それぞれのスタイルで楽しむことができました。テクニカル・ロック系やハードフュージョン系が多いですが、中にはHR/HM然としたプレーを得意とする人もいますし、Prog Metal系からの影響が感じられる人たちの演奏。いろんなジャンルを越境しながら、自分の世界観を形成している人達もいて個人的には非常に楽しめる1枚になりました。技巧派を自認するギターリスト達にとっては、新しい登竜門の場所を与えられたのではないでしょうか。また、Guitar Idolは2009年度も開催予定だそうで、既に応募はドシドシ受け付けているということです。ギターマニアの間では盛り上がりを見せており、次の年が楽しみな人もいらっしゃると言ったところであります。(プロモ盤Review)

Back to [VA] Section
Back to Review Index

Go to Top Page