JAP's PROGRE (Progressive Rock Compilation CD)
country: Japan
style/genre: Hard Prog, Symphonic Prog, Prog Rock, Keyboard Prog, 和風Prog, etc.
website: http://www.yggrdrasill.com/
related bands/artists: Gerard, Outer Limits, 絶対無, Seilane, 水鏡, etc.
similar bands/artists: Marge Litch, Casle In The Air, Alhambra, Ars Nova, Gerard, U.K., EL&P, Genesis, 新月, etc.
artist info: 日本国内で活動するプログレ系バンドの楽曲を集めたコンピレーション作品。



Prog Rock Compilation CD - JAP's Progre
YggrDrasill Records
(2008)

シンフォ・ハードからプログレ系バンドの楽曲を収録したコンピレーション・アルバム第一弾です。実は私も、後追いではありますが、日本国内で活動をしているプログレ・ハード系サウンドを得意としているグループに大変興味を持っていた時期がございます。日本のプログレッシヴ系ロックバンドというのも、海外のシーンと同様で現在に至るまで様々なタイプのものが存在しております。確かに海外の実力派グループからも当然影響を受けて、自分たちのサウンドを構築させて行ったバンドが数多く存在しております。それらと並行して80年代に活躍したNovelaStarlessなどに代表されるようなHR/HM系サウンドも上手く導入した日本的なシンフォニック寄りハード・ロック(「プログレ・ハード」もしくは「ハード・プログレ」と呼ばれるバンド群)がライブシーンを中心に国内のリスナーの間で活況を呈した時期が続きました。その後、日本のプログレシーンも色々と変遷をしていきます。多くのバンドが活動を停止したり、新しいバンドを結成して違う方向を探るなど日本のシーンも混迷の度合いを深めていくことになります。その一方、次第に海外のプログレファンからも国内のプログレ系グループが注目を集めることになります。特にGerardKenso内核の波KBBなどのグループは、海外のプログレフェスにも参加するなど知名度を挙げています。現在では、世界的にも高く評価を集めている日本のバンドも少しずつ増えてきたようにも思います。今回レヴューで紹介するCDは、新人・中堅・ベテランを含む10組の楽曲が収められた内容になっています。内容的には、シンフォハード系や日本のプログレハード系サウンドを武器にしているものが中心として紹介されています。一方、和風プログレやシンフォ系ロック、ジャズロック系のものもありますし、様式美HM〜メロディックメタル系サウンドに近いものなどもあわせて楽しめるサンプラー作品です。

日本のプログレ系バンドが好きな人の間で有名なGerardOuter Limitsのそれぞれのナンバーは、流石の安定感と実力を発揮していると思います。Gerardに関しては、このサンプラー作品に参加している中では、有名なバンドなので説明をする必要が無いかもしれませんが、ほんの少しだけコメントを入れさせて下さい。永川敏郎氏のキーボードを主軸に活躍するプログレトリオで、非常に攻撃的・躍動的なのでハードロック風のサウンドが好きな人にはアピールするでしょう。いやー流石の演奏に仕上がっています。恥ずかしながらOuter Limitsに関しては、今回初めて真面目に聴いたのですが、美しい旋律を奏でるヴァイオリンプレーを中心にしたものになって、ある意味U.K.や英国のシンフォニック系サウンドに通じる演奏で堪能することができました。サウンドも若干ハード寄りでパフォーマンスも良好です。日本のプログレ系バンドの最大のネックであり、足枷となっているボーカルの部分も英語で歌っているものの良く踏ん張っていて全く気になりませんでした。今回のサンプラーで一番気になるグループは、このOuter Limitsかもしれません。

個人的には、このサンプラーに日本のサウンドを取り込んでいる絶対無水鏡の2組が参加しているのが非常に意外でした。絶対無は新曲の「おん、そわか」が収録されています。独自性の高いサウンドと不思議な世界観を形成しており、歌詞世界はシリアスである反面・リズムや音自体はキャッチーでもあります。段々と誰かに似ているというような形容が不必要になってきたのは凄いことです。当然、彼らが追求している「和とRock」の美しくも儚いサウンドは、見事に表現されています。要子さんが脱退されているので、内容を心配してしまいましたが杞憂に終わりました。新しい女性ボーカリストとのマッチングも素晴らしい。彼らも流石の演奏とアレンジメントで唸りました。所謂プログレというサウンドとは大変異なりますが、このサンプラーの楽曲中では一番気に入っています。ちなみに絶対無は、僕のお気に入りのグループの一つなので、詳しくは3枚ほどレヴューしているのでそちらも合わせてチェックしていただけると嬉しいです。水鏡に関しては、絶対無に近い部分もありますがアプローチはかなり異なっており、ややGenesisや日本の新月を彷彿とさせる和風なシンフォニックロックという印象を持ちました。この水鏡も初めて通しで楽曲を聴きましたが、演奏やアレンジに力を入れておりプログレ系リスナーにもアピールするのではないでしょうか。

ここからは、自分が初めて聞いたバンドの感想を中心に行きます。Quiというバンドは、一番海外のプログレ系サウンドに近いタイプのようにも思いました。おそらくPoseidonレーベルに所属していると思いますが、イタリア出身のジャズロックタイプのバンドに近いと思いました。フルートなども活躍しつつ躍動的に曲が展開されており、ややFinisterreJethro Tullにも近い感じがしました。それと同時にフルートのソロが活躍するところなどは、Chick Coreaの「Spain」みたいなクロスオーヴァー風味も感じました。月兎というバンドも今回初めて聞きましたが、このサンプラーの中では楽曲もの主体という路線になっています。彼らの場合は、80年代のポップなネオ・プログレ系に通じるようなサウンドの上に、女性ボーカルが自然体で軽やかに歌っていますね。インストやアンサンブルが展開される部分では、複雑で緻密な部分も見せています。Genesisからの影響だけでなく日本のPageantTeru's Symphonia辺りに通じるものをを垣間見ることができたかのようです。護摩(Goma)と名乗るバンドは、中部地区を拠点に活動していたということでありますが、キーボードのソロが激しく展開されるところはEL&PGerardに通じる感じです。歌のパートでは躍動感は一旦収まって大人しくなりますが、インストが展開されると次第にテンポが速くなって、濃密になるというスタイルをとっています。このバンドは、Gerardにも似ているところがありますが、むしろ名古屋のプログレ系バンドのFreeloveにタイプ的には一番近いのかもしれません。

上でも少し触れていましたが、個人的にはこのサンプラーで気になっていた国産プログレハード〜シンフォニック・ハード勢を最後に見ていきましょう。Moonstoneなるバンドは、当然初めて耳にしました。このCDの中では、新人の部類になるのかもしれませんが、グループ自体の結成は90年ということなので全くの新人ではないようです。国産プログレハード系らしい、勢いと変拍子を混ぜたタイプでMarge LitchFreeloveに近い硬質なサウンドを武器にしていると思いました。Seraphitaというバンドも初めて耳にするバンドですが、キーボードの音が目立ちつつ、躍動感とテンポの速い演奏を武器にしています。ハード寄りなサウンドを売り物にしており、様式美HR/HM系に非常に近い質感を持っています。Seilaneは現在活動している国産プログレハード系の中でも、かなりテクニカルな演奏面を得意としている一方で、ライブ活動にも定評があります。Seilaneに関しては、1stアルバムのHeterodox Rocksを聴いて彼らの実力は知っていましたが、中盤で登場するテクニカル且つプログレッシヴな展開は流石だと思いましたね。Seilaneに関しては、変拍子と硬質寄りなサウンドと演奏陣がそれぞれ確かな腕を持っているので、プログレメタル系を主に聴くリスナーにもアピールするかもしれません。

今回のアルバムはプログレハード系のグループの参加が目立ちますが、日本にも様々なグループが群雄割拠してライブシーンを中心に活動していることを紹介しています。お値段もお手ごろなので、日本のバンドがたくさん同時に聴けるのでお買い得かもしれませんよ。普段聴いている海外のグループによるサウンドとは、かなり異なる場面や異質だと感じる部分も多々あるでしょう。バンドによっては、独特のかなり癖のあるサウンド・プロダクションや日本人のボーカルによる抑揚(特に英語歌詞によるイントネーションや発音)などから賛否は聴き手によって分かれるかもしれません。参加しているバンドによっては、自分たちの確固たるスタイルを形成する途中段階の人たちもいるでしょう。他方から見ると、それぞれが頑張って面白いものを作ろうとしている姿勢が感じられますので、長い目で見守ってあげては如何でしょうか。中には、結構コテコテなことをやってらっしゃる人たちもいますが、日本のプログレ音楽が色々と楽しめるというか・聴ける良質なサンプラーだと僕なんかは思いますよ。個人的にはOuter Limits絶対無の新曲が一番リピート率が高くて、この2組が提供しているナンバーが好みですね。へー日本にもたくさん色んなプログレ系バンドがいるんだなーと興味を持った方は、国内のバンドの商品を扱っている最寄りの専門店へどうぞ。(プロモ盤Review)

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