Winterlong - Longing For Winter
Lion Music
(2008)
Winterlongは北欧出身のギターリストThorbjorn Englundが主導のメタル系プロジェクトです。これまでに通産4枚のアルバムを出しております。このLonging For Winterは、過去にリリースされた4枚のアルバムの中から選出したトラックと未発表曲や新曲を集めたコンピレーション的なアルバムと言えます。自分の場合は最近リリースされた作品のうちの2枚とThorbjorn Englundのソロアルバムぐらいしかチェックしておりませんが、Winterlongの前期と最近では音楽性に大きな変化が表れていることがLonging For Winterから如実に伝わってきます。このグループは既にThorbjornによる一人バンド状態になってきていますが、スタイル的には直球勝負の陰りのあるパワーメタル・メロディックメタルが好きな人にアピール度が高いのかもしれません。正直言って、彼らのようなタイプが最近の日本国内のメタルリスナーを振り向かせるほどの力があるのかどうかは未知数です。
しかし、北欧的な美旋律のようなものを提供しているのか？と尋ねられると答えに困ってしまいそうです。分かりやすくいうと、日本でいう北欧メタルファンには余りアピールしないのでは？ということが頭をよぎるのです。最近人気のあるStratovariusやSonata Arcticaのようなタイプとは異なる印象を強く持ちました。初期の頃は、割とエッジの立ったストレートな欧州パワーメタルを得意としていた様子が伺えます。近いタイプで言うなら少し前のLars Eric Mattsonが関わっていたプロジェクトやバンドみたいな感じです。最近になるにしたがってキーボードやエレクトロニック的なサウンドを取り入れたモダンなHeavy Metalサウンドに興味がシフトしているのが分かります。面白いことに昔はもっとバンドものを意識したサウンドでしたが、最近ではThorbjorn Englundが全てのパートを演奏・レコーディングする自宅録音に傾倒しつつあることも伺える内容になっています。
実はこのWinterlongは、2作目のThe Second Comingからの楽曲が一番プロジェクトとして充実しているのではないか？という様子が伝わってきました。特に収録されている3曲目のNorthmanと7曲目のWild Winter Nightsは少しばかりProg Metal的テイストを含んでおり、個人的には一番耳を惹きました。よく調べていると実は2枚目の「The Second Coming」アルバムにはゲストドラマーとしてVanden PlasからAndreas Lillが参加しております。Andreasの参加がよい影響を与えているのか、非常に引き締まっているだけでなくSection Aにも通じるかのような魅力を秘めております。他に興味深い楽曲を探っていくと、Mistheriaが活躍するキーボードソロとThorbjornのギターソロが前面に押し出されたNeo-Classical HM的な楽曲も注目に値しますね。それから荒涼としつつもパワフルに突進する北欧メタル的な楽曲などにも関心を持ちました。
流石にアルバム全体を楽しむにしてはボリュームが多いので、アルバムの半分ぐらいにさしかかると、もうお腹が一杯になるという状態です。ダイジェスト的な作品なので、とりあえずはWinterlongが何者なのかを知るには最適なのかもしれません。古典的な北欧パワーメタル的疾走感を楽しむ人は、初期の作品に興味が行くことでしょう。モダンな路線や硬質なメタルサウンドが好きなら最近の2作品がアピールすることでしょう。Prog MetalやMelodic Metalの両方が好きな方は、やはり僕みたいに3曲目と7曲目に魅了されると同時にThe Second Coming全体はどうなっているのか？ということに関心を寄せるのではないでしょうか。(プロモ盤Review)