HEADWAY FESTIVAL 2007: Special Live Report (part1)
at P60, Amstelveen (Netherlands)
on April 6th (Friday)
a live report & all photos by Pilgrim Tetsu

[Headway Festival公式ページ][PILGRIM WORLDのTop Pageに戻る]
【page 1】【page 2】【page 3
なんと早いもので、今回が5周年目という節目を迎えたオランダのProg Metal/Rockの祭典HEADWAY FESTIVAL。参加予定と噂されていたSpock's Beard, Andromeda, Mind's Eye, Into Eternity, Last Crack, The Tangentと言ったProg Rock/Metalシーンで人気の高いグループが、それぞれの事情や理由で出演をキャンセルしてしまいました。今回は、初めて欧州行きを完全にキャンセルしようとも思っていました。ですが、どこかで諦め切れなかったので、ラインナップの決定するまで、ずっと様子を見ていました。5th Editionを迎えるにあたって相当な苦労があったと思いますが、無事今年も開催されたのはHeadwayスタッフの大きな努力の賜物です。最終的には以前から見ようと思って見れなかったZero HourSun Cagedの出演が確定したことと、今年に入ってRedemptionの素晴らしさを2nd AlbumのFullness of Timeで確信できたことが大きな後押しとなりました。最後の最後で決めました、やっぱりこれはスキップできないだろう・・・と。蓋を開けてみれば、結局参加したどのグループも素晴らしいパフォーマンスを提供しており、どの年にもひけをとらないステージングで観に行って大正解だったと一人のProg Metal/Rockファンとしてエンジョイできました。2007年度のHeadway Festivalは、初年度と同じ形式で第一日目は、Obsidian, To-Mera, Sun Caged, Zero Hourといった4バンドが出場。第二日目は、ディナータイムのインスト演奏クリニック時間(Frank Schiphorst, Marcel Coenen, Joop Wolters)を挟んで、Transmission0, Seventh Wonder, Dial, Morglbl, Loch Vostok, Sleepytime Gorilla Museum, Redemptionという具合に7つのバンドが出るという構成になっていました。このたびの旅行は、いつもよりも滞在を長くしていたので、ラッキーなことにDial/Rocket Scientists/Lana Laneのライブも見ることができましたので、パート1と2はHeadway Festivalの模様を。そしてパート3では、Dial〜Rocket Scientistsの模様をお届けいたします。それでは、Headway Festival前編レポート(April 6, 2007)をお楽しみください。

【2007/04/06: Headway Festival pt.1】
Report Index:
[Obsidian][To-Mera][Sun Caged][Zero Hour]

Obsidian:

この日は、時間ギリギリまで友人宅でくつろいでおりましたので、残念ながらほとんど
Obsidianのショーを見ることはできませんでした。1曲だけ感じとしては見ることができました。このグループは、オランダでは珍しくアムステルダムを拠点にしているテクニカル・デスメタル系バンドということで、地元のメタル系ファンには暖かく迎え入れられていたようです。現地の人と少し話を交わしたところ、「彼らからは、Meshuggahのスタイルに近いものを感じるね。激しく演奏していて、俺はかなり楽しんだよ。アムステルダムのメタル系バンドが頑張ってくれるのはいいことだよなー。」と教えてくれました。確かに雰囲気的には、以前登場して僕も印象に大きく残っているTexturesに似ているかもしれないと短い時間しか見ていませんが、そう思いました。Texturesとどっちがいいか?と聞かれると、かなり困ってしまいます(^^;)。全篇を見ていないのでコメントできなくてごめんなさい。さらに写真もなくてすいません・・・・テクニカル・デス系とは言え、確かT-Shirtでショートカットの人たちが多くてハードコア系や若手のスラッシュメタルぽい雰囲気だったという記憶です。風貌はかなり若手だったと思うので、きっと今後伸びてくる可能性はありそうだというのが、話を一部の人から聞いての感想です。

To-Mera:
2番手は英国出身のProg Metal/Gothic Metalグループ: To-Meraが登場です。すでに英国のメタルシーンを中心に欧州でも少しづつ名前が浸透しつつある存在であります。今回のHeadway Festivalではイギリス出身は彼らだけとなりましたが、ステージで繰り広げられていた演奏は大変印象に残る凄いものでした。あのOpethを輩出したことでも知られているCandlelight Recordsからのリリースということで、かなりプッシュされていると思います。辛口の批評で有名な英国シーンで鍛え上げたであろう、その演奏能力のクオリティーは非常に高くキッチリとまとまっていました。リードボーカリストのJulie Kissは元はハンガリーのGothic Metal/Prog MetalグループのWithout Faceに在籍していたシンガーですが、こちらのTo-MeraもWithout Faceに少し似ていると思いました。しかしながら、このグループTo-Meraの場合は、Gothic Metalのイメージとは大分異なり、インスト陣は若手ながらテクニカル度は大変高く、技巧的に非常にコンプレックスなインタープレーやソロを披露しております。リズムパートは大変緻密で、非常にハードドライビング且つ圧倒される技巧的側面も強調しています。かと思いきや、Julieの歌を中心にしたアトモスフェリックでスペーシーな色合いのセクションでは静謐且つシンフォ・ゴシックなムードを作り上げるのも巧みであります。技巧性の高いProg Metalサウンドで、女性ボーカルも得意というリスナーにはジャストミートすることでしょう。比較的ベーシストのLee Barrettは、凝りまくったことはしない感じでしたが、前述したようにリズムパートが複雑なところではその一員として頑張っています。ギターリストのTom MacLeanは、テクニカルなパートの要となっており、リズムパートからスリリングなリードに至るまで高次元のレベルに到達していると思います。キーボーディストのHugo Sheppardも技巧的なレベルはTomに負けずにテクニカルなソロやさまざまな音色やバッキングで大きく貢献しており、時には前面に大きく突出していました。ドラマーのAkos Pirisiはテクニカル且つコンプレックスなリズムに対応して、終始パワフルでスリリングなスタイルを貫いていて大変良かったです。次のアルバム制作も視野に入れているせいか新曲も含め、1stアルバムからの代表曲をほとんどプレーしていました。今回のライブは初めて英国の外でプレーしていたということですが、非常に堂々としており英国のテクニカルメタル、プログレメタルなどが活況を呈しつつある兆しなのではないか?と嬉しく思いました。うーむ、勢いのある英国のバンドを見るというのは素晴らしいことですね。当然、ライブの後にはマーチャンダイズのテーブルで買い物をしました。ベーシストのLeeさんから購入しましたが、風貌は怖そうですが(?)、サービスまでしてくれて親切な方でした。To-Meraは、この日も次の日もオーディエンスに混じって熱心に他のグループのステージも食い入るように見てフェスティバル自体を楽しんでいるようでした。また男性メンバーはバーでくつろいでいる様子も何度か見かけました。
[公式ウェブサイト: http://www.to-mera.com/]

Sun Caged:
少しのインターバルを置いて、いよいよSun Cagedの登場となります。入念にサウンドチェックを行っていたせいか、開始時間は遅くなるものの出てくる音のかけら一つ一つが非常に面白く、ステージがどのようになるのかワクワク感が急上昇していく。開始時間は遅くなったものの、遂にスタートです。新体制になって2度目のライブということだが、序盤は2ndアルバムのArtemisiaからLyre's Harmonyで登場。とても2回目とは思えないほど、すでに新しいラインナップの信頼感・安定感は極めて抜群ということが伝わってくる。そういえば前回Marcel Coenen with Friendsにおいて、万全の体制だっただけに今回はどうなるか?といったことは、Sun Cagedの場合杞憂でしか無かった。新シンガーのPaul Adrian Villarealのパフォーマンスや咽喉の調子も文句なしで、ミディアムからハイトーンに至るまで、とてもクリアでクリーンな歌声で素晴らしい。今回のMCで分かったことだが、なんと彼はアメリカはサンディエゴ出身だそうではないか。どうりで英語の発音や抑揚がオランダ人ぽくないなー。アメリカン英語を究めようと頑張っている人なのか?と思ったこともありましたが、なるほど了解です。インターナショナルなProg Metal系フェスティバルとしては、彼のMCは分かりやすくてとてもありがたい。

うーむ、それにしても全体的な流れがスムーズ、演奏は当然テクニカルな部分からドラマティックな部分まで完成度が高い。Prog Metalサウンドが好きな人たちは、スゲーと唸るしかない。ライブで初めて納得したが、新しいドラマーのRoel van Drielが非常にパワフルなドラム演奏を繰り広げるだけでなく、繊細なパフォーマンスも得意としているところが素晴らしい。個人的な印象としては、Greg BisonneteやDeen Castronovoに通じるだけでなく、以前Vigilanteでドラムをプレーしていた山市修也さんにも近いものがあるかもしれない・・・とふと思ったりもしました(ぜんぜん違うと怒られそうなので、間違っていたら・先にあやまっておきます)・・新加入のRene Kroonだが、この人も「今までどこに居たの?」というぐらい、非常に幅広いキーボードワークを得意としております。ソロからナイスなバッキング、そしてコンピングに至るまで高いレベルを持っています。このオールラウンドな仕事ぶりは、むしろVanden PlasのGunter Wernoに通じる凄さだ。音色の使い分けや決めるところはビシっと決める司令塔のような働きすらあったと思う。かなり若い人だと思うが、これだけトータルでいいものを持っているというのは驚きである。アルバムで気になっていた少し薄くなるかな?と思っていたキーボード部分を完全にカバーしており、全く非の打ち所が無くなっているかのようで、好きなKeyboardist奏者の仲間入りをしそうな勢いかもしれません。ベーシストのRoel Vinkだが、この人も前任者に負けない演奏能力を持っているかのようで、すこぶる安定したプレー且つ、ここぞというときにはLemur VoiceのBarend TrompやRob van der Looにも劣らぬ技巧的なフレーズやパッセージも繰り出していて恐れ入りました。前回のパフォーマンスとは異なり、Marcel Coenenはというと当然テクニカルなプレーを得意としているものの、バンドの一員としてかなり抑えたプレーも見せて引き際をわきまえているようでした。前面に出る場所では、いつものように痛快なソロやリードで観衆をあっといわせておりました。ドラマティック且つアンサンブルに溶け込んだテイスティーな奏法を中心にしておりました。

先ほどのグループに引き続き、これだけの安定感とプレーを見ることができるのは流石、Sun Cagedという他なしです。曲目はほぼ全てが2ndアルバムからで後半に1曲だけ、Stevie Wonderのカバー・・・最近の若い人たちにはRed Hot Chili Pepparsが演奏していたと言ったほうが分かりやすいですね。Stevie Wonderの名曲「Higher Ground」をSun Cagedバージョンでやっていましたが、これがすこぶるカッコイイ!。途中でジャジーでラウンジ風になったかと思うと、急激にハードになったりするのは、彼らの前進バンドともいえるLemur Voiceが昔カバーしていたMichael JacksonのBeat Itに通じるユニークさ。秀逸だったのは、BloodlineやUnborn辺りの楽曲でありましたが、2ndアルバムは全体的に良い楽曲がそろっていたので、たっぷりと堪能いたしました。今回は、Sun Cagedの2ndアルバムを念入りに予習・復習して出向いたので、全曲大変楽しめるライブとなりました。アルバム盤も素晴らしいですが、ライブの方がさらに良い音とパフォーマンスをやっているという印象すら持ちました。このバンドには、ぜひ来日してプレーして欲しいものであります。ライブの前後で、ドラマーのRoel van DrielやMarcel Coenenと挨拶を交わすことができて良かったです。
[公式ウェブサイト: http://www.suncaged.com/]

Zero Hour:
記念すべき第1回目のHeadway Festivalにも参加していたZero Hourが、5回目となる今回はヘッドライナーとして登場しました。地元オランダのファンにとっても感慨深いものがあったと思います。欧州で自分たちのスタータスを築き上げる第一歩となったのが、このオランダの地ということで熱が大変こもったライブパフォーマンスの夜となりました。僕自身も彼らの存在を知ってから、この日が来るのを楽しみにしていた一人でした。Zero Hourの場合、バンドを結成して以来、なぜかリードボーカリストが数回にわたって交代しております。最新作の「Specs of Pictures Burnt Beyond」に至っては、遂に元Power of Omensで活躍していたChris Salinasが参加しています。当然、セットリストの曲目は最新作が中心でありますが、バランスよく代表曲を各アルバムから演奏してくれたのが、ファンとしてはとても嬉しいです。個人的には大好きなアルバムThe Towers of Avariceからの楽曲も演奏されていて、その破壊力と緻密に計算されたコンプレックス&テクニカルな演奏がぶつかってくるのを受け止めるのに精一杯でした。地元ファンの間でも2ndアルバムは好評のようで、観衆もかなり盛り上がりを見せていました。

すでにDeath MachineでZero Hourの3人の演奏陣の凄さは体感していましたが、ヘッドライナーとしての立場のステージングと本気モードの高さを見るとDeath Machineが子供に見えるぐらいの圧倒的なパワーとテクニカルなインタープレーの応酬にため息が出るほどです。それにしても凄い迫力と圧倒的なパワーのあるProgressive Metal/Technical Metalサウンドを楽しむことができました。Tipton兄弟Mike Greyのアンサンブルの鉄壁さは、以前見たときよりもさらに強固且つシャープに研ぎ澄まされたものとなっており、痛快このうえありませんでした。今回やっぱり注目していたのは、果たして鈴木沙里奈・・・いやもとい(笑)・・・、Chris SalinasがZero Hourというグループにおいて、どのように存在感を発揮するのか?ということでした。アルバムでも聴かれるように、意外とミディアムレンジから低音に至るまでこれまでPower of Omensで見せなかった表現で歌っている場面もしばしば。Zero Hourというグループに完全に溶け込んでいるだけでなく、呼吸をしているという印象を持ちました。とても力強く、彼のもともとの持ち味である咽喉の強さとエモーショナルな表現で、演奏陣の爆裂疾走するサウンドに太刀打ちできる強力な武器を持っていることを発見できました。Power of Omens時代、同様ここぞとばかりに出るハイトーンの安定感は凄まじく、見ている観衆は度肝を抜かれたことでしょう。ハイトーンを武器にしているメタル系シンガーはたくさんいますが、この人のハイトーンを始め、肺活量というのは他を圧倒しているのではないでしょうか。もっと繊細な感じの人なのかと思いきや写真では少し伝わりにくいかもしれませんが、格闘派タイプかもしれません。格闘しながら、ときには切々と歌うというタイプの人です。K-1選手にいそうな体格の持ち主でありますし、ステージアクションからTestamentのChuck Billyぽい印象も受けました。いやいや、彼が歌を歌っているときは釘付けになるほど、かなり魅了されました。

Troy & JasunのTipton兄弟のコンビネーションは双子ならではの息のピッタリ感とコンビネーションで決めまくりです。Jasun Tiptonがソロを取るパートではスウィープと流麗な指裁きを特徴とした難解なギター奏法とクリーンなアルペジオを武器に。そしてもう一人のTroy Tiptonも技巧的にリズミカルなベース奏法でリードを取り、スラップ&サンピングなども絡めたスリリングな部分や高速フィンガリングで野太いパッセージも繰り出すなど活躍していました。Mike Grayは以前と比べてお痩せになったのか、風貌はCathedralのLee Dorianというか、Troubleのギターリストみたいな感じになってました。しかし、Tipton兄弟をサポートするだけでなく、時にドラムでテクニカル且つコンプレックスなパッセージを刻むという技も見せているところが、Zero Hour的といえるのではないでしょうか。Zero Hourは、非常にテンションの高い演奏で突き進む一方で、アトモスフェリックな雰囲気や解放感のようなパートもわきまえており、テンション&リリースを信条にしたProg Metalはどの楽曲でも健在だったと思います。ひょっとしたら、一番の盛り上がりの場面だったのは、楽曲Falcon's Cry辺りだったと思います。最後から数えて2曲目辺りでボーナスとして新曲を演奏しますが、序盤がかなり・ややこしいのかでMike Grayの辺りから次第に崩れて完全にストップしてしまいます(^^;)。ここまである程度、空気が張り詰まっていただけに、観衆からはほっとしたような声がもれ・・次第に微笑みと暖かなエールで見守られる中、「もう一度やらせてくれ!」ということで再度演奏がスタート・・・今度は全く乱れることなく完遂して流石です。まだまだ続いて欲しい至福のときでしたが、最後はさらにパワーをチャージしてエンディングを迎えました。いやー会場の皆さんからの反響も大きくZero Hourのパフォーマンスは、大成功だったと言えるでしょう。大地を切り裂き、振動を呼び覚ますかのような豪快なProg Metalサウンドを充分を体感でき満足いたしました。終演後、すぐにステージ近くに行きTipton兄弟と軽く挨拶を交わしましたが、彼らの表情からは充実していた様子が伝わってきました。ライブを楽しんでいたということが、充分に伝わってくるものになりました。興奮渦巻く、Zero Hourのパフォーマンスを満喫してホテルへの帰途につきました。
[公式ウェブサイト: http://www.zerohourweb.com/]

【page 1】【page 2】【page 3
[Top Pageに戻る]