Review: "STRAMONIO"

country: Italy
style/genre: Prog Metal, Italian Prog Rock, etc.
website: http://www.stramonio.com/
related bands/artists: Trilogy Suite, Luca Arrighini, etc.
similar bands/artists: Dream Theater, Abstracta, Madsword etc.
artist info: イタリアを代表する実力派シンフォ・Prog Metalバンド。



Stramonio - Time Will Tell
Ivory Gates Records
(2004)

イタリア出身のドラマティックProg Metalグループによる通産3枚目となるアルバム。 このStramonioの場合は、1stアルバムで劇的でエレガントな音楽性を既に確立していたので、 自分の中では大変印象に残っているバンドの一つであります。イタリア出身のProg Metalサウンドを好む人達の間では、割と人気が高かったように思います。 ところが不思議なことに、彼らはこの1stで確立した路線から、やや離れたスタンスへと次第に方向転換をしていきます。 サウンド的にモダンロックに走ってしまったとか、全くの別モノになってしまったという訳ではありません。 確かにProg Metalのスタイルは保持していますが、何やらコンプレックスなMelodic Metalバンドになってしまったような感じがしました。 どうも違う方向に行ってしまって、残念かなあ?という認識の仕方をしています。あとボーカリストは交代していない筈ですが、 どうもバンドの中でちょっとパフォーマンス自体が弱いような部分も顔を出すので、ハッキリ言って個人的に凄く気になりました。 1stの時には、リードボーカリストのFederico De Vescoviの存在に違和感は無かったはずなんで、不思議な感じです。 ドラマティックな展開を持つ楽曲では、彼の柔和で優しい発声方法や抑揚の付け方はマッチしていますので、その辺りは安心してください。 Stramonio側がアプローチの仕方を代えてしまったからなのか、自分の耳にはボーカルの発声方法だけでなく、歌メロもしっくり乗ってこないように感じる時が瞬間あります。

そういうことも起因しているのでしょう。私が知っているProg Metalファン達の間では奇妙な共通認識があって、 「Stramonioは1枚目だけが別格で、後は聴く必要は全く無い」と本気で思っている人もいらっしゃいます。 ですが、1stであれだけの充実したエレガントなProg Metalサウンドを構築していたのが忘れられないところもあったので、 聴かず嫌いでチェックしないのは勿体無いという気持ちが高まってきました。 そこで、新しいアプローチは取っているけど良いものは確実に存在しているだろうと期待して、 素の状態で「Time Will Tell」に対峙してみることにしました。正直、初回CDを聴いた印象は、 どうも音にパンチが無いような気がして、ちょっとショックでした。どうもヘヴィな感触が省かれたような、 どうも軽くなってしまった感じがつきまとってしまいました。 曲によっては、完全にアメリカのフュージョン・ロックのようなスタイルを標榜しているものもあります。

またProg Metal色が皆無な場面があったりと聴いていて、何度か不安な気持ちになりました。 また完全にメロディアス・ハード系の路線も顔を出すなど、見方によっては焦点が合っていないような感じさえありました。 初期のStramonioにドップリと嵌っていた人にとっては、完全に戸惑ってしまう気持ちが理解できる気がしてきました(汗)。

しかし、今回改めて聴いてみて、いろいろと嬉しい発見や良い部分があることにも気づきました。 馴染むまでに少し時間はかかりましたが、全体的には中々に完成度の高い演奏が楽しめる良質なProg Metalの部類に入ると思います。 1stアルバムと比べると、このアルバムでは正統的なProg Metalサウンドやスタイル以外にも、 AOR系のメロディック・ロック風味が強いものが登場してくるのがリスナーによってはネックかもしれません。 まず驚かされるのは、フュージョンやモダンな音楽の影響も姿を見せています。 ただし、全く1stアルバムの時に培ったものが消え去ってしまったのかというと、そういう訳でもないです。 むしろ1stでやっていた良い内容を振り返ったかのような、原点回帰のような形跡も見せています。 全く1stアルバムでやっていたことの焼き直しというのではなく、良い意味で改良してコンテンポラリーな仕上がりを狙ったのかもしれません。

見渡してみると、自分達のやりたいことだけでなく、CDを聴くリスナー側にも楽しめるアプローチや余裕を持たせたのかもしれないと解釈しています。 プロダクション自体は、良好な仕上がりとなっています。メンバーそれぞれの演奏に耳を澄ますとミュージシャンとして成長を遂げているようですね。 カバー曲として、BlondieのCall Meをやっているのが意外でしたが、結構嵌っているかもしれません。

曲単体で、取り出してみるとシンプルでストレートなナンバーが目立つような感じがしてギョっとはします。 ドラマティックな形態ではなく、もっと直球で突進するかのような濃密なパフォーマンスやアンサンブルの中にも充分楽しめる部分はあります。 Dream Theaterに通じるようなテクニカルでProg Metal然とした楽曲は、やっぱり彼らの持ち味だけに聴き応えは充分あります。 リズム隊を含めて一体となったバンドの演奏は、やっぱり素晴らしいと思います。 煽情性の高いギターのソロやキーボードのソロが活躍するところは胸がスカっとします。 個人的にはテクニカルなフュージョン路線を新しい要素として一部取り入れているようなので、 その辺りは新しい部分として評価をしても良いのではないでしょうか。 Prog Metalバンドに新しい要素や奇抜な内容が入っているのに違和感を感じる人には、 Time Will Tellは厳しい内容かもしれませんので覚悟はしながら聴いて判断することをお薦めします。 色んな新しいことを取り入れているせいか、やや拡散しすぎているかもしれません。 最終的には自分もやっと新しいStramonioの方向性にも馴染んできたので、楽しめる部分が増えてきました。(購入盤Review)


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